「日中ハイレベル人的・文化交流対話」に臨んだ岩屋外相(画像:外務省HP)。

 

《ニュース》

岩屋外相と中国の王毅外相が「修学旅行の相互受け入れ促進」で合意したことが、国会で波紋を呼んでいます。

《詳細》

岩屋外相は昨年12月に中国を訪問し、王毅外相と会談しました。「中国人観光客向けのビザ発効要件の大幅緩和」などを発表し、批判が噴出していました(関連記事参照)。

これに加えて新たに波紋を呼んでいるのが、「修学旅行の相互受け入れを促進する」との合意が会談の中でなされていたことです。

外務省のホームページには、「『日中教育交流5か年計画』を着実に実施するとともに、修学旅行の相互受入れを促進し、自治体や高校・大学等におけるスポーツ・文化活動を含めた交流を推進すべく、両国での環境醸成、モデル事例の創出に取り組むことで一致しました。また、日中の高校生、大学生を対象とする交流事業等の継続・推進を確認しました」と記されています。

これを問題視した自民党の有村治子氏が3月、参議院外交防衛委員会で疑義を唱えました。昨年、中国国内で日本人児童の死傷事件が相次いだことを受け、「警戒レベルが上がっている中、わざわざ日本人学生を修学旅行で中国に送ることを積極的に推進するなど国民感情を逆なでするのではないか」と指摘しました。

岩屋外相は、「中国の地方政府に安全確保で協力を求める申し入れを行う」といった取り組みを挙げ、「今後も中国側と連携し、中国で修学旅行を実施する学校について、教師や児童らの安全確保に全力を尽くしていく」と釈明しています。

4月2日には衆議院文部科学委員会において、日本維新の会の西田薫氏が同様の質問を投げかけました。これに対し阿部俊子文科相は、「日本の個々の学校に対して中国への修学旅行の実施を求めるということではなく、中国への修学旅行を希望する学校に対し、政府として安全確保の面で可能な支援を行うという趣旨だ。修学旅行の訪問先の選定は各学校の判断に委ねられている」と回答しました。

これに対し西田氏は、「厳重な警備をしなければいけない場所に修学旅行に行くのは本当に問題だ」「子供たちを使って、中国に対して媚びへつらっているような思いがする」と述べています。

中国では昨年6月、蘇州で日本人の母子らが刃物で襲われ、12月には深センで日本人学校の男児が刺殺されるなど、痛ましい事件が相次いで発生しました。ただ日本政府はその後も、中国本土への渡航や滞在の「危険情報」を、新疆ウイグル・チベット両自治区を除き「レベルゼロ」のままにしていることも疑問視されています。なおアメリカは「渡航の再考を求める」「不当な拘束の危険が存在する」としてレベル3、台湾も「不必要な渡航を避けるよう勧める」としてレベル3、カナダやオーストラリア等はレベル2と認定しており、環太平洋先進国でレベルゼロとしているのは日本のみです。

岩屋外相は危険度を引き上げない理由について問われた際、「痛ましい事件ではあるが、ウクライナやガザなど戦闘が起こっている地域に比べれば、中国全土の危険情報を引き上げる状況にあるかどうかについては、現状の判断になっている」と回答。これには「あまりに信じ難い」などと批判が殺到しています。

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