2024年10月号記事

ニッポンの新常識

軍事学入門 51

西側はロシアの消耗戦をナメた(後編)

─戦況推移の詳細分析─

世界の流れを正しく理解するための、 「教養としての軍事学」をお届けする。

ロシアが消耗戦に移行したことは前号で紹介した。同戦略は領土の奪い合いではなく、戦力が勝敗を分けるため、戦力を失った方が白旗を上げる。ロシアは消耗戦の理論を発展させてきただけに、その強さは並外れている。

消耗戦を行うには、経済を動員する必要がある。だがロシアは開戦当初、西側諸国の制裁に耐えなければならず、十分に動員できなかった。

ロシア中央銀行が市場に介入し、通貨の暴落を食い止めることに成功。2022年4月に経済崩壊を回避した後、ロシア政府はいよいよ民間部門の動員を進める。制裁で入手が困難になった部品などを洗い出し、少なくとも夏には武器・弾薬の増産を本格化(経済動員令)。以降、軍需産業はフル稼働し、弾薬などの枯渇を防ぐことになる。