澁谷-司.jpg

アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

中国では今年7月、3中全会が開かれる。同会は今後5年間(場合によっては約10年間)の経済政策を決める重要会議である。本来、昨秋に開催予定だったが、今夏まで持ち越された。

香港の時事評論家・劉鋭紹は、3中全会の開催が難航したのは、「彭麗媛ファクター」、つまり習近平主席が彭麗媛夫人を中央政治局(25名枠だが、目下24名で1枠が空席)に参加させることを希望していることと関係があるかもしれない、と推測した(*1)。この点については後述する。

(*1)2024年4月30日付『中国瞭望』

「改革・開放」路線再開の噂の虚実

実は、今度の3中全会で「改革・開放」路線を再開するという内部文書がセルフメディア関係者によって中国本土で出回っているという(*2)。

多くのネットユーザーはその話に賛同していない。だが、中国専門家である顔純鈎はその可能性を完全に排除することはできないと考えている。ひょっとして、習主席は、今の「反改革・開放」路線を進めば必ず中国共産党が滅亡することを悟り、ようやく引き返す覚悟を決めたのだろうか。

もし新たな「改革・開放」政策が導入されれば、それは過去10年間、中国で導入された「反改革・開放」政策と制定された数々の強権的な法律とは相反する、と顔純鈎は指摘する。しかし、これらの法律を廃止しない限り、「改革・開放」へ後戻りすることは不可能である。だが、それらを廃止すればさらに政局の混乱を招くだろうと述べている。

習主席がそのタイミングを誤った場合、中国共産党が十分な準備を整えず"後戻り"することがかえって裏目に出て、内外にダメージを与えるかもしれない。顔純鈎は、習主席の政治的センスの"限界"により、厳格なロックダウンとそれに続く突然の封鎖解除に見られるように、間違った時期に間違った決定をする公算が大きいと述べた。

(*2)2024年5月13日付『万維読者網』