2024年3月号記事
このままでは姥捨て山と国家破産!?
医療費と年金で国が沈没する
経済成長を阻害しかねない医療費の急増。問題の本質を探った。
「あのおじいさん、今日は病院に来ないわね。病気になったのかしら?」
こんな会話が行われる昨今の病院。「憩いの場」と化している様子が伺える。
バブル崩壊後30年以上、長期不況にある日本で医療費は右肩上がりに伸び続け、現在政府が医療に支出する費用は、年間50兆円に到達せんとしている。
先進国の国債はジャンク債に
先進各国は、若年人口に比して、高齢者が増加し、年金や医療などの社会保障面で、財政負担が増える構図になっている。
ここに上昇するインフレ率が手伝って、借入コストが高まり、国債の元本と利子の返済額が上昇。米格付け会社のS&Pは昨年1月、高齢化のコストを軽減する対策が講じられない場合、2060年までに世界の経済大国の約半数がジャンク債(*)に格下げされると発表した。
高齢化の問題は深刻だ。世界でも最速のスピードで高齢者人口が増えているのが日本である。
65歳以上の人口比率は2050年には40%に達する見込みで、病気に罹りやすい75歳以上の後期高齢者が急増する時代に突入する。現在、年金、医療、介護で140兆円を政府支出で賄うが、経済学者の蔵研也氏によると、「将来、年金・医療・介護の社会保障給付費の200兆円超えは確実」だという(本誌56ページ)。
現在の社会保障制度の枠組みは、1970年代前半の人口が増え続ける時代に設計された。しかし、予測されていなかったのは、日本が世界の中でも超長寿社会を享受する恵まれた社会になることと、高齢者を支える若年人口の減少である。
日本では、2010年をピークに人口は減少しはじめ、分母(支える側)に対して、分子(支えられる側)が極端に大きいいびつな人口構造になっている(下図)。高齢者の医療を勤労世代の税金で賄うことは、政府を介した巨大な所得再分配である。
大幅な増税なく、この制度を持続することは不可能だろう。
人口問題は本来、中長期の課題であったが、今や政府が社会保障は「聖域」として対策を先延ばしにすればするほど、改革は痛みを伴うものとなる。
では、このまま医療費が増え続ければ、何が起きるのか。
専門家に話を聞いた。