《ニュース》

新型コロナウィルスの起源および新疆ウイグル自治区における人権蹂躙をめぐって、複数の検索エンジンで中国政府の意向に沿った情報が上位に表示されていると判明しました。

米シンクタンクのブルッキングス研究所とAlliance for Securing Democracy(民主主義保護連盟)がこのほど公表した報告書により、明らかになりました。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙などが報じています。

《詳細》

「ウェブを制する:中国政府はいかにして新疆とコロナに関して世論を形成するために研究結果を利用しているか(Winning the web: How Beijing exploits search results to shape views of Xinjiang and COVID-19)」と題された同報告書によると、調査の対象となったのは以下の5つの検索エンジンです。

グーグル検索、グーグルニュース、マイクロソフトによるBing検索、Bingニュース、グーグル傘下のYouTube。これらの検索エンジン内で、昨年11月から今年2月にかけた120日間、「新疆(Xinjiang)」と「コロナ(COVID-19)」に関連するキーワード12件に関してデータを集めたとのこと。

報告書によると、「新疆」という言葉を検索したところ、上位10の検索結果の中に少なくとも1つ中国国営メディアによる発信が入る可能性は88%、調査期間120日のうち106日を占める割合だったといいます。つまり、新疆という言葉を調べると、毎日のように中国国営メディアの発信が上位に表示されていたということです。

YouTubeに限定するとさらに状況は悪く、98%の割合で上位10の検索結果に中国国営メディアが含まれていたといいます。

コロナに関しては、例えば中国政府がコロナの発生源だと主張する米軍医学研究施設「フォート・デトリック(Fort Detrick)」をYouTubeで検索すると、上位10位の表示結果のうち半分を中国国営メディアによるコンテンツが占め、それらは特に証拠を挙げないまま、同施設がコロナの起源であると示唆する内容であったとのことです。

同じく中国政府が発生源の候補として主張する、旧日本軍の研究機関とされる「731部隊」についてもニュース検索エンジンで検索すると、検索ページの1ページ目に毎日、中国政府の意向に沿った内容が表示されたといいます。

これまでも、大手検索サイトによる検索結果に偏りがあることを示す分析はなされてきました。

本誌2021年1月号特集「言論統制をするGoogleは独禁法違反!」でも、グーグルでコロナの起源について検索すると、「中国政府の代弁」が上位に表示されることを検証。さらには調査を進める中で、「中国」「コロナ」を含む言葉の検索結果から、本サイトの記事がウェブ上から"消されて"いたことも明らかになっています(関連記事参照)。

この度の報告書は、中国政府が自国のプロパガンダを拡散する上で、大手検索サイトを大いに活用している実態を、改めて浮き彫りにしたといえます。

《どう見るか》