2022年4月号記事
Divine Economics
サプライサイド経済学の父 ラッファー博士
トランプの歴史的な大型減税法案成立の舞台裏を語る(前編)
Part 21
トランプ政権で成立した大型減税法はアメリカで多くの雇用を生み税収増をもたらす歴史的なものとなった。
だが成立までに熾烈な攻防戦があった。起草者のラッファー博士に成立の舞台裏について聞いた。
(聞き手 長華子)
アーサー・B.ラッファー
1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。サプライサイド経済学の父。レーガノミクス、トランポノミクスを導いた。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(幸福の科学出版)などがある。
──ラッファー博士はトランプ前政権が2017年末に施行した大型減税法である「減税・雇用法(TCJA)」の起草者です。この法案には多くの批判がありました。一つ目は「税制政策センター」によるものです。このシンクタンクは、この税制改革を行うと、6.2兆ドルもの歳入減になると主張しました。
これに対して博士は同年9月、「繁栄を解き放つための委員会」から論文を発表し、理論的な反論を行いました。この論文は、議会やホワイトハウスの内部で、バイブルになったとのことです。この時のご経験や、議員らを説得した時の攻防戦について詳しく教えていただけますか。
ラッファー博士(以下、ラ): 当時私は、サール自由信託から20万ドル(約2300万円)の資金提供を得て、アメリカ経済の計量経済モデルをつくりました。モデルの鍵となるアメリカの国内総生産(GDP)成長率や、税収の伸び率など、統計上主な変数となる項目についてみていきました。
モデルではGDP成長率、政府支出、所得移転(給付金)、財とサービスの購入との関係や、平均的な税率、最高限界税率(*1)、所得税、法人税、給与税、キャピタルゲイン課税などを詳細に調べていきました。
驚くべきことがモデルで起きていることに気付きました。それは個人所得税の税率が高ければ高いほど、経済成長のスピードが鈍化するということです。累進性が高いほど、別の言葉でいうと、最高税率が平均税率と比べて高いほど、経済の成長が遅くなっていたのです。
またそれは、法人税が経済成長において決定的で、法人税率が高いほど成長が遅くなることも示していました。これがデータから導き出されたことです。その他、給与税やキャピタルゲイン課税も調べてみると、成長を鈍化させることが分かりました。
(*1)最高位の税率区分の所得額に適用される税率。
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