静岡県熱海市伊豆山地区で、7月に大規模な土石流が発生した。その翌日、「ソーラパネル建設などで保水力を失った2系統の禿山箇所から、市街地を襲う土石流となったのではないか」とするツイッターを発信していたのが、札幌医科大学名誉教授の高田純氏だ。
本誌2021年12月号特集「グレタ教は世界転落への道」で紹介しきれなかった、高田氏のインタビューを掲載する。今回は後編。
高田 純
──総発電量に占める再生可能エネルギーの割合について、政府からは2030年に30%、50年に50~60%とする案も出ています。これらをそのまま実現した場合、どれほどの規模の発電所をつくる必要があるのでしょうか。
高浜原子力発電所軽水炉4基分で339万kW、面積233ヘクタールです。また、茨城県水郷潮来ソーラ発電所で1.45万kW、面積17ヘクタールになるという実例から、まず、原子力発電20基分をソーラ発電に切り替えるための面積を計算してみました。
定期点検や日照時間などを加味して、原子力の稼働率は70%、ソーラ発電の発電利用率は15%として計算すると、原子力20基分をソーラパネルで置き換えるには、92km2という広大な土地が必要となります(※高知県の土佐市の面積が91.5km2)。
それほど巨大な面積のものを一カ所につくりようもありませんから、日本列島の上に並べるとします。かつ、ソーラ発電を主力電源化し、24時間電気を供給するためのバッテリーを付随させ、充放電ロスと直流交流の変換ロス分を20%と考えます。すると幅120m、長さ920kmのソーラパネルベルトを山間部に建設しなければなりません。920kmとはおよそ青森市~日光~神戸市の距離です。
次は、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が15%になったらどうなるでしょうか。
日本の総発電力は年間約1兆kWhです。その15%を24時間365日、ソーラ発電で供給するとなると、0.15兆kWhとなります。発電敷地面積は1.2×200km2で北海道から鹿児島まで、山地にソーラパネルベルト幅120m、長さ2000kmを建設しなければなりません(下はイメージ図)。
再生可能エネルギーの割合が30%ならば、幅120mのソーラパネルベルト2000kmを日本列島に2本、60%ならば4本必要になります。これはまさに日本の国土破壊です。
ソーラ発電は高コストかつ電力不安定
画像:umaruchan4678 / Shutterstock.com
しかも、通常のリチウムイオンバッテリーの寿命は、充放電500回ほどです。昼間充電し、夜間放電を毎日繰り返すサイクルになるので、1.3年毎にバッテリーを交換し、寿命10年とされるソーラパネルを10年毎に交換します。部品のみならず交換工事コストも上乗せになり、とても割高です。産業廃棄物の量も膨大になります。
年間通じて、風雨や台風、地震、竜巻にさらされるリスクもあり、物理的強度も他の発電施設に比べて圧倒的に弱いので、停電リスクが最も高いのも大きな問題です。ソーラ発電を主電源化すれば、高コストのみならず、電力供給が不安定になり、日本の生活と産業は破壊されることになるのです。
原子力エネルギーこそ、確実な発電技術
現在のところ、原子力エネルギーこそが、二酸化炭素排出を低減できる確実な発電技術だと言えます。
フランスは、原子力発電が7割を占め、世界一エコな国です。日本も以前はそこそこエコな国でした。東日本大震災以前、東京都の発電は核エネルギーが約7割を占めていましたが、原発が止まって以降、電気料金が高くなりました。製造業は、コスト面から日本で製造できなくなったため、中国で製造しています。
環境省の仕事は、日本の国土や環境を守ることです。経産省が新たなエネルギー産業を創り出そうとしていても、「国土破壊につながるからやめなさい」と、率先して食い止めるのが環境省の仕事のはずであるのにそれを放棄しています。
国民はもっと、県や環境省に怒りをぶつけるべきだと思います。それをしていないのはマスコミが報道していないからです。
また政府には、原発の再稼働や新設を推進し、ソーラ発電の主力電源化をやめ、山間部でのソーラ発電を禁止する方向で動いてほしいです。(了)
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2021年12月号 グレタ教は世界転落への道 もうすぐ始まる地球寒冷化
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