メディアの形は進化し続け、情報の量は増え続けている。便利な反面、その情報をどう消化すればいいのか。著名コンサルタントに話を聞いた(2016年2月号記事より再掲。内容や肩書きなどは当時のもの)。
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小宮 一慶
私はいつも、経営者や企業リーダーを目指す人たちに、「経済新聞の1面は必ず読むように」と言っています。経営のセミナーでも、3分の1は時事問題や、経済情勢の解説をします。
世の中の流れが正しく見えれば、経営はたいていうまくいきます。ニュースの見方を教えることは、経営コンサルタントの仕事そのものです。
「外部環境」の分析は必須
通常の管理職までは、与えられた仕事や事業の進行管理が仕事の中心となります。
しかし、経営者の仕事の肝は、方向付けです。「どんな事業をやって、どんな事業をやらないか」を決めることです。
その判断で必要となってくるのは、「どんな商品やサービスを、世の中は求めているのか」。つまり、外部環境の分析です。その一環として、メディアチェックは必須なのです。
私のお客様で、ある印刷会社の社長は10年前、普通の印刷業から「ネット通販」に切り替えました。チラシデータをネットで受注して、印刷する形態です。それ以降、毎年20%もの勢いで成長しています。
各企業でチラシが作れるほどパソコンが高性能化し、インターネットもますます普及する、と早い段階で見抜いたからです。
一方、世の中の変化に気付かない、あるいは他人事だと思っていた印刷会社は今、「印刷不況」に苦しんでいるはずです。
情報を読み解く4つの指針
では、リーダーを目指している人は、どのように新聞などのニュースやメディアを読むべきでしょうか。
(1)まず大事なのは、常日頃からの問題意識です。「自分はいかに会社や、社会に貢献するか」。それを考えずに、自分の収入や評価ばかりを考えていると、新聞や雑誌にいい記事があっても目に入りません。
(2)新聞を読む方でも、自分が見出しに反応した記事しか読まない方が多いです。
しかし、一面記事は、ベテラン記者が「これは大事だ」と思って選択したもの。世の中の関心に自分の関心を合わせる訓練として、幅広く読むようにするべきです。
(3)ニュースを見たときに、「自分はどう思うか」を考えるようにしてください。ニュース番組で、コメンテーターが意見を言っているような感じです。深く思考することで、単なる情報が知恵になるのです。
(4)ライバルの動向をしっかり観察してください。ライバルよりもいい仕事をすれば、成功するようになっています。
ライバルと自社を、quality(質)、price(価格)、service(サービス)と分解して比較し、どこがどう違うのか謙虚に考えてみてください。
例えば、日本の大手自動車メーカーは2020年までに自動運転の実用化を目指すと発表しています。あなたがタクシー会社の経営者だったらどうしますか? タクシードライバーを雇って養成するという、今までのビジネスモデルが、10年後には通用しないかもしれません。
東芝の経営者は勉強不足
また勉強という意味でいえば、昔から読み継がれている古典や、宗教書を読まなければいけません。人としての正しい生き方を学ぶためです。
最近、東芝の粉飾決算や、マンションの杭打ちデータの偽装が、世の中を騒がせました(当時)。
私に言わせれば、あれは経営陣の勉強不足です。技術的なことばかり勉強して、「企業が存在する意義は、社会や人に貢献すること」ということを勉強していない。だから、あれだけ根本的な判断ミスを犯すんです。
「足は大地に、目は星に」
ステップアップを目指している方ほど、目の前の仕事で忙しいはずです。「ニュースを勉強したり、古典を読む時間なんてない」と言うかもしれません。
しかし、「足は大地に、目は星に」という言葉があります。
サッカー選手と監督の仕事が違うように、経営者の仕事は、今やっている仕事の単なる延長にはありません。目の前の仕事の腕を上げることでスピードを上げ、将来のための勉強時間を捻出してください。
短期の努力と、長期の努力の両方が必要なのです。(談)
【関連書籍】
『富の創造法』
幸福の科学出版 大川隆法著
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