すべての社員を営業戦力化する「全員営業」の手法を体系化した経営コンサルタントに、成果を生む組織の特徴を聞いた。
※2019年3月号「人が育つ現場の秘密 『勝ちグセ』営業組織のつくり方」のインタビュー記事の再掲。
経営コンサルタント
辻 伸一
(つじ・しんいち)1967年、徳島県生まれ。同志社大学卒業後、三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。旅行大手H.I.S.に転職し、西日本ナンバーワンの営業実績を上げる。その後独立し、辻経営有限会社を設立。すべての社員を営業戦力化する「全員営業コンサルティング」を日本で初めて体系化した。
営業力を強化しようとする際、営業マンを採用する話になりがちですが、中小企業にとっては重い判断です。固定費は確実に増えるのに、成果を出せる営業マンを獲得できるかは分からないからです。
すべての社員を営業戦力に
そこで私は、すべての社員に何らかの形で営業にかかわってもらう「全員営業」を提唱しています。
例えば、電話や人の対応に慣れている総務部門であれば営業のアフターフォロー、ITや書類作成が得意な管理部門であれば顧客管理、商品知識が豊富な製造部門には商談同行による支援などです。
顧客から見れば、接する人が営業部の社員かどうかは関係ありません。各部門の強みを生かして営業に参画すれば、今いる社員のままで、会社の営業力は確実にアップします。
営業力と生産性を同時に強化
そのためにはまず、今までやっていた仕事を見直すことが大事です。トップは「これをやれ」と指示しても、「やめていい」とはまず言わないもの。そのため、営業の現場には、いつの間にかやるべき仕事が年月とともに積み重なっていきます。
ですから、成果が出ていない仕事や、今は必要性が低い仕事については、会社としてやめる意思決定をすることで余力を生み、その空いた時間を活用して、新たな営業の動きに取り組めばいいのです。そうすれば、現場の負担は今以上に増えないどころか、軽減する場合すらあるため、社員からの反発は出なくなります。
各部門の生産性向上は、どちらにせよ取り組むべき課題です。ゆえに、全員営業を導入すれば、本来、取り組むべき各部門の生産性と、会社全体の営業力も同時にアップするという一石二鳥の成果が得られるのです。
まずはBの人材を営業戦力化することで、人を増やさず、会社の営業力3割アップから倍増を目指す。
計画の実行には個別対応を
よく「やることをやれば成果は出る」と言われますが、「やれば」の部分がポイントです。「やること」は会社全体で計画を立てて体系化できますが、「やれば」の部分、つまり計画を「実行」したり、方針を「運用」したりする部分は、社員によって能力差や意識差がありますので、すべて個別の対応が必要です。
やることだけを決め、「あとはやっておけ」という経営者もいますが、これでは思うような成果は上がりません。具体策の一つは、営業マンと個別に面談し、問題解決の手を打つことです。たとえば、"言い訳"の見極めです。「他社より高いと言われた」というのは言い訳でも、「他社より5%高いと言われた」は、検討すべき経営情報になります。「忙しい」という場合も言い訳でしょうが、「1日10件は訪問できても、それ以上は事務作業が多く難しい」というなら、改善するポイントが見えてきます。
さらに優秀な営業マンは、難易度の高い新規開拓に回すべきです。優秀な営業マンを取引額の多い既存顧客に回していることが多いはずですが、それでは会社の未来はありません。
丁寧な個別対応には、時間も労力も必要ですが、この部分をどれだけやれるかによって、経営者の考える計画と現場の実行との差が、広がるか、無くなるかの違いが生まれるのです。(談)
【関連書籍】
『コロナ不況下のサバイバル術』
幸福の科学出版 大川隆法著
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