2016年8月に米紙の取材を受けるムーア氏。写真:AP/アフロ
2019年6月号記事
ニュースのミカタ 特別編
単独インタビュー
トランプの経済ブレーンが「中止」を緊急提言
消費増税は「最悪の選択」
ヘリテージ財団
シニアフェロー
スティーブ・ムーア
プロフィール
(Steve Moore) 1960年生まれ。イリノイ大学を卒業後、ジョージ・メイソン大学で修士号を取得。レーガン政権の経済政策立案者であり、トランプ政権の大型減税の立案者の一人。共著に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(未邦訳)など。
トランプ米大統領の経済ブレーンの一人、スティーブ・ムーア氏が米連邦準備制度理事会(FRB)の理事候補になっています(4月19日時点)。
FRBはアメリカの金融政策の舵取りを行う「中央銀行」ですが、2018年12月、4回目の利上げを決めました。今年も2回利上げをする見通しでしたが、3月に一転して利上げを見送りました。米中貿易戦争などによって経済成長の鈍化が予想されるためです。
ただ、トランプ氏は利上げの見送りでは不十分で、さらなる金融緩和が必要と考えています。そのため自身の考えに近いムーア氏をFRBに送り込もうとしています。
本誌2018年5月号にも登場したムーア氏は4月16日、ワシントンD.C.のヘリテージ財団で本誌の取材に応じ、日米共に成長路線を堅持する重要性を強調。その上で日本の消費増税に対し明確に反対を表明しました。
アメリカの成功事例に続くべき
2018年1月の一般教書演説後のレセプションにてトランプ大統領と談笑するムーア氏(右)。写真:Official White House Photo by Shealah Craighead
──FRB理事候補となっていることをどう考えていますか。
ムーア氏(以下、ム): 「トランプ氏はFRBを乗っ取ろうとしている」と心配する声もありますが、それは事実ではありません。トランプ氏は「経済を成長させたい」と考える人々をFRBに入れたいと考えているのだと思います。これは称賛されるべきことです。
FRBの問題は、「経済成長はインフレを招く」と考える人が多すぎることです。これはバカげた考えであり、間違っています。
私はアメリカ経済を底上げし、国民にもっと豊かになってもらいたいと思っています。しかし、金利が高すぎてそれが実現できないのです。(現時点の)利上げは経済成長を止めるので、すべきではありません。
FRBの基本的な考え方を「引き締め路線」から、「経済成長路線」に変えていくべきだと思います。
──経済成長を実現させるには、どのような政策が必要ですか。
ム: 経済成長に必要なのは、「減税」と「規制緩和」です。 これらを実行したことによって、トランプ政権下のアメリカは今、真の経済ルネサンス(再生)を迎えています。
日本も欧州も、経済が停滞しており、中国経済もぐらつく中で、アメリカの経済成長は世界各国の羨望の的になっています。減税や規制緩和の政策を維持することで、アメリカ経済は今後5年間、4%の成長が見込めると思っています。日本もアメリカと同じことをすれば、経済成長のスピードをもっと速めることができるでしょう。
消費増税は経済成長を止める
──安倍政権は今年、消費税を10%に上げようとしています。
ム: 10%への増税は恐るべきアイデアであり、最悪の選択です。日本経済が成長していないところに増税したら、もう成長を取り戻せなくなります。
増税は、生産性の高い民間部門からお金を吸い上げ、非生産的な政府部門に送ることを意味します。私はこれまで、「税金を上げて豊かになった国」を見たことも聞いたこともありません。
トランプ政権と良好な関係を持つ安倍政権が、成長政策とは真逆の方向に進もうとしていることは非常に残念です。 日本政府が今すべきことは、消費税の増税ではなく、法人税と所得税の減税です。
──大川隆法・幸福の科学総裁は、大統領選の前からトランプ支持でした。
ム: ご支持に感謝します。おかげさまで、アメリカ国民、特に労働者が報われています。日本でもアメリカと同様の政策が実行できるはずです。トランプ氏は「アメリカを再び偉大な国に」しましたが、次は「日本が再び偉大な国に」なることを願っています。
(聞き手 藤井幹久・幸福の科学国際政治局長)
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トランプ政権は2017年末から1.5兆ドル(約170兆円)規模で法人税、所得税を減税しました。また、エネルギーや金融の分野を中心に過去にないペースで規制の廃止を進め、結果として政権発足後2年余りで約500万人にものぼる雇用を生み出しています。
トランプ氏は5月末に来日予定ですが、それを前にトランプ氏の中心的な経済ブレーンが日本の経済運営に強い懸念を表明した意味は大きいといえます。
安倍晋三首相は今のところ、予定通り消費税を増税する考えを表明しています。しかし自民党内では「増税延期を決断し、衆参同日選に踏み切るのではないか」と予想する声もあります。
安倍首相は4月末にも訪米し、トランプ氏と会談します。安倍首相は、「決断」を迫られる局面を迎えています。