シリア北西部のイドリブ県で、4日、シリアのアサド政権による神経ガスとみられる化学兵器の攻撃で、少なくとも70人以上の民間人が死亡した。

2013年にも同様の化学兵器による攻撃があった。その際、オバマ氏は、「化学兵器を使用したら軍事介入をする」とレッドラインを表明していたにもかかわらず、軍事介入をためらった。その時とは対照的に、トランプ大統領は5日、ヨルダンのアブドラ国王との共同記者会見の冒頭、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したと断定し、「私にとっての、多くの一線を越えた(crossed a lot of lines)」と強く非難。翌6日夕方、武力攻撃に踏み切った。

今回のトランプ氏によるシリア攻撃には、次のような大きな意義がある。

(1)意表を突くスピードで武力行使に踏み切り、実行力を示した

まずは、シリア政府による化学兵器の使用から2日でシリアへの攻撃に踏み切ったことだ。化学兵器の使用が判明した直後から、計画策定に着手した。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、攻撃目標の選定は、6日午前、国防総省のビルの地下にある「国家軍事司令センター」で行われたという。化学兵器による空爆の基点となったシリア西部のシャイラト空軍基地を含む攻撃目標を決め、ジェームズ・マティス米国防長官へ報告が行われた。

攻撃のゴーサインが出されたのは、同日夕方であり、意表を突く速度の武力行使と言える。

(2)共和党重鎮マケイン上院議員らも支持を表明し、共和党が一枚岩になった

共和党の重鎮マケイン氏は、リンジー・グラハム上院議員とともに、トランプ氏の実行力を讃え、「前政権と異なり、彼は、決定的な瞬間に立ち向かい、行動を起こした。このことに対して彼は、アメリカ国民の支持を得るに値する。私たちはついに歴史の教訓学んだ」との声明を発表した。

同じく共和党のマルコ・ルビオ上院議員は「空軍基地を攻撃したのは、今後もアサド政権が使えないようするための適切な攻撃である。行動しないことによる不利益は、行動した場合よりはるかに大きなものになったはずだ」とトランプ氏を支持した。

「小さな政府」を政策として掲げるランド・ポール氏が「憲法違反」と批判する以外は、共和党は総じてトランプを支持しているようだ。

(3)ロシアへの配慮によりロシアとの関係に亀裂は入っていない

米軍によるシリアへの武力攻撃については、ロシア側に事前通知し、ロシア軍が駐留する一角を攻撃対象から外すという配慮も示した。これは、大規模な攻撃によってロシア軍に人的被害が出て、米露の軍事的緊張が高まることを避ける狙いがあった。

ロシアも、シリア内にある基地からトマホークを迎撃しておらず、来週行われる予定のティラーソン米国務長官とラブロフ露外相との会談もキャンセルしていない。ロシアは、表向きはアメリカの攻撃について「侵略」と非難しているが、今回の一件で、両国の関係に大きな亀裂が入ったと見るべきではない。

(4)北朝鮮、中国、イランにアメリカの決断力と実行力を示した

今回アメリカが発射した59発のトマホークミサイルは、シリア政府軍に壊滅的な損害を与えたと見られる。いざ攻撃を決めたら、徹底的に叩くというトランプ政権の強い決意を示し、アサド大統領が自国民を虐殺し放題という悪しき状況に終止符を打ったと言える。

このトランプの姿勢は、シリアのアサド政権だけでなく、北朝鮮、中国、イラン等に対する影響を有する。「一定のラインを越えたら許容しない」ということを口だけではなく、行動で示したからだ。

アジア問題に詳しい米コラムニストのゴードン・チャン氏は、フォックス・ニュースに「金正恩氏は、アメリカの軍事攻撃の可能性を考慮に入れるようになる。2003年イラク戦争時に金正日が6週間身を潜めたように、金正恩氏も雲隠れする可能性があるのではないか」とコメントした。さらに「この空爆は、アメリカの空軍・海軍を軽く見る中国人民解放軍への警告を意味する。習近平氏は、この空爆を彼に対する不敬の表れだと解しただろう」と述べた。

トランプ氏の外交方針である「Peace Through Strength(力による平和)」とはいかなるものかを北朝鮮、中国は注視せざるを得なくなった。

神の正義を忖度するトランプ氏

シリアの攻撃直後に行ったスピーチのなかで、トランプ氏は、「困難な世界の課題に立ち向かっている我々に神の叡智を求めたい(We ask for God's wisdom as we face the challenge of our very troubled world)」と述べた。では、神の御心はどこにあるのか。

2013年、幸福の科学・大川隆法総裁は、シリアのアサド大統領守護霊へのインタビューを行い、以下のように述べている。

オバマさんは、ノーベル平和賞をもらったのに、攻撃はやりたくないのでしょうけれども、やはり、こういうのを見逃すと、テロ国家、ないしは、そういう独裁国家がまた次々と悪さをし始めるので、ここは頑張らないといけないのではないでしょうか。世界が『警察がなくなった暴力の町』のように変わっていくことは、やはり止めるべきではないかと思います

( 『アサド大統領のスピリチュアル・メッセージ』 所収)

すでにアメリカの保守系メディアでは、トランプ氏によって「America Is Back(アメリカが復活した)」と報じるニュースも出てきている。アメリカの復活は、神の正義の探究なくして始まらない。

そうでなければマケイン氏もいうように「決定的な瞬間」で決断することができないからだ。

新たな世界秩序を切り開くトランプ氏の実行力は、「世界の警察官」から撤退したオバマ前大統領時代の旧秩序との決別を世界に示したと言えるだろう。

(長華子)

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