2017年5月号記事

トランプに続く「まさか」は欧州で起きる

EU危機をサッカーで読み解く

メルケルとトランプは「メル友」になれるのか?

"ヨーロッパの火薬庫"となったドイツに歯止めをかけるのは誰か。

名乗りを上げるのは、アメリカのトランプ大統領。

世界秩序の主導権を握るのは果たしてどっち?


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メルケルとトランプは「メル友」になれるのか? - トランプに続く「まさか」は欧州で起きる Part2

メルケルとトランプは「メル友」になれるのか? - トランプに続く「まさか」は欧州で起きる Part2


初の米独首脳会談が3月18日にアメリカのホワイトハウスで行われた。

AFP通信が「緊張感漂う冷たい雰囲気」と報じたように、まるで試合が始まる前のピッチ上に立つサッカー選手のごとく、トランプ米大統領とメルケル首相の顔はこわばっていた。

会談で話し合われたのは経済や難民問題。トランプ氏が共同記者会見で、ドイツとの貿易について「より公平な貿易が必要だ」と述べると、メルケル氏は「交渉者はドイツでなく、EUだ」と反論した。

また、トランプ氏がテロ対策として移民の制限の必要性を強調すると、メルケル氏は自身が進める難民の受け入れが「正しい解決策だ」と応戦した。

両国は対立し、一致点を探す方が困難だった。譲る気配のない両者だが、実はトランプ氏の方が筋が通っている。その理由とは―。

1回戦 積極財政 vs. 財政均衡

財政思想

トランプ 積極財政

メルケル 財政均衡主義

通貨ユーロ

トランプ ユーロは不当に安い

メルケル 安いのは認めるが、ドイツのせいではない

貿易政策

トランプ 対独貿易赤字の是正を要求

メルケル アメリカとの考えは異なるが、妥協点を見出す

メルケル対トランプの貿易政策をめぐる戦いは、政権発足前のトランプ陣営のキックオフから始まる。

「ユーロは不当に安い」(トランプ氏)、「アメリカの貿易赤字削減方法について、ドイツと率直な議論を交わすことが有用だと思う」(米国家通商会議のピーター・ナヴァロ委員長)

アメリカは約7兆円に上る対独貿易赤字の是正を訴えた。

これに対し、ドイツ側は「(ユーロが安いのは)ドイツのせいではない」(メルケル氏)、「この黒字を不正操作で築いているとは、誰も言えない」(ショイブレ独財務相)と反論する。

いがみあう両プレーヤー。サッカーで言えば、ドイツのチケット代が不当に安く、他のチームのチケットは売れない。ところが、ドイツは「チケット代はEUチームの総意が決めており、自分のせいではない」と主張しているようなものだ。

ドイツは昨年、貿易で約30兆円の黒字。一方の国がボロ儲けすれば、一方は大損する。トランプ氏の介入はこれを是正するもので、健全な判断である。

次ページからのポイント

ドイツが不況の引き金に

インタビュー / メルケルはEUの盟主か、独裁者か? 川口マーン惠美氏

正しい「ドイツ・ファースト」