オバマケアはなぜ失敗に終わったのか(後編) - Divine Economics サプライサイド経済学の父 ラッファー博士 Part 20
2022.01.28
2022年3月号記事
Divine Economics
サプライサイド経済学の父 ラッファー博士
オバマケアはなぜ失敗に終わったのか(後編)
Part 20
オバマ政権下で行われた医療保険制度改革はなぜうまくいかなかったのか。
その原因と解決策について語ってもらった。
(聞き手 長華子)
アーサー・B.ラッファー
1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。サプライサイド経済学の父。レーガノミクス、トランポノミクスを導いた。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(幸福の科学出版)などがある。
──オバマ大統領は2014年に、医療保険に加入していない無保険者を減らし、かつ医療費の削減に向けて、医療保険制度改革(通称「オバマケア」)を推進しました(*1)。
しかし、このオバマケアは浸透しなかったと言われています。博士はオバマケアをどう見ておられますか。
ラッファー博士(以下、ラ): 質問にお答えするために、政府と医療との関わり全般についての説明から始めましょう。
人間社会として、お年寄りや体の弱い人などが、重篤な病気で「残念ですが死ぬしかありません」といって路上に放置されることがあってはなりません。政治的な理由からだけでなく、人間としての観点からも、政府は医療に携わる必要があります。
人間社会のあるべき姿を考えると、政府が医療に関与する必要がある分野は3点に絞られると考えています。
(*1)アメリカには高齢者向けの「メディケア」と低所得者向けの「メディケイド」という公的医療保険制度がある。日本が国民皆保険であるのに対し、アメリカは自由診療が基本である。
政府は3つの分野以外医療に関与してはならない
1つ目は、個人で賄えないほどの高額の治療費で苦しむ人がいなくなるようにすることです(*2)。ただそれは厳密に高額医療費のかかる病気に限定されなければなりません。
この医療費をカバーする保険に政府が関わるのは理にかなっています。しかも、この分野に対する政府支出は国の予算の中で莫大な規模を占める医療費のごく一部にすぎません。
(*2)日本にも医療費が高額になった場合の「高額療養費制度」が存在する。
アメリカの自由診療には透明性がない
オバマケアは健康な人にはメリットなし
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