「いずも」空母化で、日本は何ができるようになる? 軍事専門家に聞く
2018.01.12
いずも型護衛艦(画像は Wikipedia より)
《本記事のポイント》
- いずもの空母化の理由は、「尖閣諸島を守るため」
- 「F35B」が搭載するミサイルで、日本周辺に侵出する艦艇などを叩く
- 安倍首相は、空母の必要性について、正面から国民に説明すべき
防衛省が、海上自衛隊の護衛艦「いずも」を空母に改修し、最新鋭戦闘機「F35B」の搭載を可能にする計画を検討していると報じられている。いずもはヘリコプター搭載型の護衛艦だが、小規模な改修により、戦闘機を搭載できる。
本誌2018年2月号で、「トランプが『核装備』『改憲』『空母保有』を首相に要請」というスクープ記事を報じたが、これが現実化しつつあるようだ( http://the-liberty.com/article.php?item_id=13934 )。
こうした動きについて、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、軍事学や国際政治学を教える河田成治氏に、いずもの空母化の意義について話を聞いた。
◆ ◆ ◆
空母化ニュースは「防衛大綱」の観測気球
河田成治氏(以下、河): まず前提として、今後10年、どういう防衛装備を持つかを定める「防衛計画の大綱」というものがあります。これは概ね10年に1度改定されますが、今年の夏に草案をつくり、年内に決める予定です。
そのため政府から、観測気球的に、空母化の話が持ち上がっているのです。今年中に大綱をつくって、5年ごとの政策などを定めた中期防衛力整備計画(中期防)も、年内に決める予定です。中期防には、来年から予算がつきます。
安倍晋三首相は、「今までの憲法の枠内で何ができるか」という発想を持っていますが、「トータルの日本の防衛力はどうあるべきか」という戦略も考えているようです。いずもの空母化は、筋の通った話だと思います。というのも、自衛隊は、陸海空の統合運用を目指しています。これを統合戦闘能力と言います。
いずもの空母化は、「尖閣を守るため」
――統合戦闘能力において、いずもの空母化には、どういった理由があるのでしょうか。
河: いずもの空母化の意義は、第一には、「尖閣諸島を守るため」です。
現在、沖縄の那覇基地にあるF15戦闘機が、尖閣諸島上空の防空に当たっています。しかし、到達までに30分かかります。燃料の搭載量には限界があり、1時間強ほどしか防空任務に就けません。往復1時間かかるとなると、実際の戦闘時間は極めて短いわけです。戦闘時には燃料を最大限に使うので、5~10分しかもちません。
そこで、戦闘機を載せたいずもが、尖閣付近にまで近づくというわけです。
陸上自衛隊の水陸機動団が佐賀県で発足しますが、これはアメリカの海兵隊を見習ったものです。水陸機動団は、尖閣が奪われたら、艦船やオスプレイで上陸部隊を運び、逆上陸して奪い返します。しかし、上空の安全が確保されてないと、オスプレイはすぐに撃ち落されるので、海と空が一体となった作戦を実施できなければ、尖閣は守れません。統合戦闘能力を向上させる一環として、いずもの空母化が持ち上がったわけです。
また長崎県佐世保には、海兵隊が運用している「ワスプ級強襲揚陸艦」という軽空母が配備されました。これは、いずもとそっくりであり、F35Bが搭載でき、海兵隊の作戦を上空から支援する目的があります。日本は、これを真似ているのです。
「F35B」のミサイルで、日本に侵出してくる艦艇などを叩く
――つまり、いずもにF35Bを載せ、尖閣への侵攻に備えるというわけですね。
河: そうです。いずもに搭載できるF35Bは、ステルス戦闘機であり、攻撃機です。F35Bには、導入が検討されている空対地・対艦ミサイル「JSM」を搭載できます。
日本はすでに類似したミサイルを持っていますが、射程は120~130キロの範囲です。F35Bに、それよりも遠くから発射できるJSMを搭載することで、攻撃の「長射程化」を図り、尖閣をガッチリと守るつもりです。あくまでも、日本周辺に侵出してくる艦艇やミサイル発射台などを叩くことが目的です。
将来的には、尖閣防衛のためだけでなく、北朝鮮や中国などの脅威を取り除くために、F35Bを投入することもありえます。
さらには、南シナ海での航海の自由を守ることも、想定できるとは思います。つまり、シーレーンの防衛です。しかし、いずも自体に自分を守る防御能力はないので、イージス艦のような盾になる艦艇とセットでないと、南シナ海に行かせることはできません。
――いずもの空母化とF35Bの導入で、国を守れる可能性が高まりますね。
河: ただ、いずもは改修しても、戦闘機を10機しか運用できません。アメリカのワスプは20機くらい載りますので、それと比べると能力はかなり落ちます。相手の戦力によりますが、いずも1隻では足りません。いずれは、2~4隻体制になるでしょう。
政府はもともと、いずもを空母化しようと考えていたのでしょう。少しずつ進めて、いつの間にか空母をつくるという、いかにも日本的な悪いやり方です。チョロッと出せば、マスコミから叩かれないというわけです。小野寺五典防衛相をはじめ、政府は空母化の計画を否定していますね。極めて姑息です。政府は、空母の必要性について、正面から国民に説明すべきです。
――ちなみにアメリカは、11隻の原子力空母を保有していますが、日本が原子力空母を持つべきでしょうか。
河: 原子力空母の建造には、一切手をつけていないので、かなり時間がかかるでしょう。アメリカから買った方が早いです。持つべきだとは思いますが、10年~20年かかります。原子力空母は、燃料を入れなくていいのですが、5~10年ごとにオーバーホールして核燃料の交換をしないといけませんので、お金も相当かかります。金と時間の面で融通が利きづらいですね。
もちろん長期的には持った方がいいですが、いずもクラスの空母を持つことで、当面のプレゼンスは高まります。
新型迎撃ミサイルの売却は、既定路線
――アメリカの国務省は、新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の日本への売却を承認しました。このミサイルは、イージス艦から発射され、飛来する弾道ミサイルを迎撃するためのものですが、これについてはどうですか。
河: このミサイルは、日本とアメリカが共同開発したもので、売却は既定路線でした。日本を守れる範囲が広くなり、性能が上がっているので必要です。もっと早く進めるべきです。
陸上自衛隊にイージス・アショアが配備され、さらにSM3ブロック2Aが配備されると、日本のミサイル防衛のレベルは格段に上がります。ただ、飽和攻撃といって、ミサイルがたくさん撃たれた場合、対処できるかどうかは不安が残ります。
――現在、アメリカから「日本と韓国は核装備の検討を」という意見も出始めていますが、トランプ大統領や安倍晋三首相はどう考えているのでしょうか。
河: ちょっと分かりかねるのですが、安倍首相は、そこまでは考えていないでしょう。日本政府は、アメリカの核の傘が確実に機能しており、抑止できることが重要と考えていて、まずはそれを進めていると思います。実際に、日米間で核の運用に関する調整はかなり詳細に詰めているところです。核装備の必要性を言えば、安倍政権が潰れる可能性があるので、恐くて言えないのだと思います。
(聞き手:山本泉)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『自分の国は自分で守れ』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1916
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