経産省が「教員の生産性向上」支援 公教育の自由化で生産性は上がる
2017.08.28
《本記事のポイント》
- 経産省が、授業や部活指導の外部委託を援助することを発表。
- 日本の教員の労働時間は長く、生産性の向上は確かに必要。
- しかし、公教育を自由化することで生産性を上げることは可能。
経済産業省が、教員の生産性向上のため2018年から新たな事業を始めることを、このほど日経新聞が報じた。
具体的には、生徒のレベルに合わせたオンライン授業や外部講師の授業を、タブレット端末を使って受けられるようにしたり、部活動の指導を外部に委託したりすることを、資金面から援助するという。教員の労働負担を軽くし、教育内容を改善する狙いがある。
教員は長時間働いているのに……
この背景には、OECDの調査結果と、現在日本が抱える教育課題があると見られる。
2013年に行われたOECD国際教員指導環境調査によると、教員の労働時間は、参加国平均38.3時間なのに対し、日本は53.9時間と最長だった。特に課外活動の時間が平均2.1時間に対し7.7時間と長かった。
また、文部科学省によれば、日本は教育に個人のお金を投じる私費負担率がOECD加盟国平均と比べて高い。家庭の所得が学歴に影響してしまうため、経済格差が学力格差を生む可能性が問題視されている。
このデータをそのまま受け止めれば、日本は、教員が長時間働いているのに、国民を満足させることができていないということになる。生産性の向上は、確かに課題であるといえよう。
外部委託でいいのか?
しかし、外部委託をすることが、本当に生産性の向上につながるのだろうか。
冒頭で紹介した通り、経産省が考えているのは、授業の補完と部活動における外部委託である。部活動の外部委託は、すでに杉並区や大阪市でも実施されており、専門的な指導ができるという意味ではある程度効果的な方法といえよう。しかし、授業まで外部講師に委託するのはいかがなものか。
塾や私立学校が成果を出せる背景には、入試や学力別のクラス分けによって学力が均質化されるため、レベルに合った指導ができることと、塾間・学校間での競争の原理が働くことがある。一方、公教育は各学級の学力がほぼ均等になるよう編成される。1クラスの人数も授業内容も細かく決められるため、子供ひとりひとりに合わせた教育を行うことが難しい。
だからこそ外部委託を、という発想なのだろうが、そもそもこの細かな規制を取り払い、均質化しすぎる仕組みを見直せば良いのではないか。塾の学校化や飛び級制度の導入など、もっと自由な教育を取り入れる方が、根本的な解決につながるだろう。
先生たちも、自由に自らの工夫や努力ができ、それによって成果が出て評価されるほうが、能力を発揮しやすいはずだ。教育への情熱を持って先生になった人であればなおさらである。
また、経済格差が学歴格差を生む原因は、公教育の質が低いことにある。
教育社会学者の舞田敏彦氏は、住民税が高い地域ほど国・私立進学者が多いことを指摘している。経済的に余裕がある家庭は塾に通えるし、私立学校にも行ける。だから学歴が高くなる。逆に言えば、公教育が私立と同等以上のレベルで、塾が必要ない教育をすることができれば、このような問題は生じないはずだ。
安易に税金を投入し、外部の力による「生産性の向上」を目指す前に、現行システムの改善をはかるべきだ。
(HS政経塾 須藤有紀)
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