外務省がやっと米慰安婦像裁判を支援 安倍外交は「歴史戦全敗」を更新中だが
2017.03.07
外務省が米最高裁に提出した意見書。
- 《本記事のポイント》
- 日本政府が慰安婦像裁判に意見書を提出し、日系人らを支援
- 政府の支援は評価できるが、後から言い訳をつくるため!?
- 敗北続きの安倍外交の「歴史戦」は戦略不在
米カリフォルニア州グレンデール市に設置された「慰安婦像」の撤去をめぐり、地元の日系人らが原告となり、同市を相手取った裁判を行っている。原告の訴えは、一審、二審とも認められず、現在、連邦最高裁に上告を求めている。これに対し、日本政府がこのほど、「原告の請求は認められるべき」とした第三者意見書を最高裁に提出した。
政府が意見書を提出するのは異例のこと。意見書には、「グレンデール市の慰安婦像は確立した外交方針への妨害であり、逸脱である」「慰安婦問題は日韓間の敏感な問題であり、米国の矛盾する判断によって混乱が生じかねない」などと記され、原告の訴えを補強するものとなっている。
なぜ政府はいきなり支援を?
遅きに失したものの、政府がようやく対応に乗り出したことは評価できる。
だが、原告は以前より、政府の書面による支援を求めていた。これまで"無視"してきた政府が、突然、意見書を提出した理由が判明しない限り、手放しで評価することは早計である。
さらに、原告が訴えている最高裁への請願も、ほぼ100%が棄却されてきた前例を考えれば、政府がもっと早くに対応できなかったのかと疑問符もつく。むしろ、勝算が薄い中で、政府が態度を一変させたのは、「後から言い訳をするためではないか」と勘ぐってしまうほどだ。
安倍外交は「歴史戦全敗」を更新中
本誌・本欄で何度も指摘しているが、安倍外交の「歴史戦」に限って言えば、戦績は「全敗」だ。
「日本を、取り戻す」というスローガンを掲げていた安倍晋三首相は、いっこうに靖国神社に参拝せず、2015年10月には、中国が申請した「南京大虐殺文書」のユネスコ記憶遺産(現:世界の記憶)の登録を許した。この時も政府は、中国にほとんど反論しなかった。
15年末には、謝罪外交の代名詞である「河野談話」の内容と、本質的に同じである「日韓合意」を締結し、元慰安婦を名乗る女性に対して韓国の財団を通じて10億円を支払った。
なぜ連敗続きの安倍外交が、有識者などから賞賛されているのか。また、そうした外交を行ってきた岸田文雄外相が「次の総理大臣候補」と言われている点についても、理解に苦しむ。
そもそも、安倍首相がどのような戦略や哲学に基づいて歴史戦を戦おうとしているのかがまったく見えてこないのも問題だ。そのため、今回の対応が「場当たり的」に見えてしまうのだろう。
安倍首相は、正しいことは正しいと言い続ける「勇気を、取り戻す」べきではないか。
(山本慧)
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