テロをなくすための考え方

「イスラム国」は悪魔なのか?

イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件は、日本のみならず世界に衝撃を与えた。

1月初旬には、「アルカイダ」によるフランス週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件も起こった。

イスラム過激派によるテロはなぜ起こり、どうしたらテロはなくなるのか?

幸福の科学グループ・大川隆法総裁は、1月から2月初旬にかけ、ムハンマドの霊言、「イスラム国」指導者・バグダディの霊言、人質となった日本人2人の霊言を相次いで収録し、イスラム・テロの真相と解決への道筋を示した。

人質事件は事態悪化の引き金を引いた

「イスラム国」に拘束された日本人の人質は、公開された映像などから既に殺害されたと見られ、「イスラム国は悪の権化だ」との論調がまき起こっている。日本と「イスラム国」は事実上の交戦状態に入り、海外駐在中の日本人の身に危険が及ぶ可能性が高まっている。さらに、アメリカが主導する有志連合による「イスラム国」への空爆も強化され、民間人を含む多くの人が亡くなっている模様だ。

「人を救いたい」「真実を報道したい」という2人の思いは理解できるが、結果として事態悪化の引き金を引いたといえる。後藤さんは「自己責任でシリアに入る」とのビデオを残していたものの、「自己責任」の範囲を超えてしまった。

「イスラム国」はなぜテロを起こすのか

もちろん、罪のない民間人を拘束して殺害する「イスラム国」の行為は許されない。しかし、憎しみに対して憎しみで返せば、新たな悲劇を生む。ここは冷静に考えてみる必要がある。

そもそも、なぜ「イスラム国」はテロを起こしているのだろう。

(1)追い詰められたスンニ派の復興運動

まず指摘したいのは、「イスラム国」は、アメリカの中東政策の失敗から生まれたという事実だ。「イスラム国」が勢力を拡大しているイラクで、アメリカはスンニ派のフセイン政権を打倒。アメリカ軍占領後に誕生したシーア派政権によって、敵対しているスンニ派の人々は追い出された。だが、混乱を収束することなく、アメリカはイラクから撤退した。イラクの一部のスンニ派はシーア派の弾圧から身を守るため、同じスンニ派の「イスラム国」と手を結び、結果として「イスラム国」の勢力は急速に拡大してしまった。

大川総裁は、人質となった2人の霊言が収録された『 スピリチュアル・エキスパートによる徹底検証 「イスラム国」日本人人質事件の真相に迫る 』(里村英一/綾織次郎 編著 幸福の科学出版刊)において、「イスラム国」の支配地域が広がっていくことは悪としながらも、 「フセイン政権が倒れたことによって、スンニ派が迫害を受けていることは事実なので、彼らが何とか生きていけるような体制をつくること自体は、国連とか、いろいろなところが入って、考えてあげるぐらいの義務はあると思います」 と述べている。

(2)欧米中心主義に対抗している

また、彼らが掲げる「イスラム教に基づく国家建設」という理念はある程度理解できる。

イスラム教は平和を愛する教えであり、ほとんどのイスラム教徒はテロには賛同していないが、欧米諸国が中東やアフリカの地で好き勝手に国境を引いたり、混乱の種をまいたりして、多くの人の命や富を奪ったことに潜在的な不満を持っている。イスラム国が勢力を拡大し続けているのが何よりの証拠だろう。

(3)追い詰められ、限られた武器で抵抗している

さらにいえば、ナイフで数人を殺せばテロとされ、ミサイルで民間人を含む数千人もの命を奪うことは残虐ではないのか。これについてバグダディの霊は、 「君らは、数人の人質を殺したかどうかみたいなことばかりを一生懸命、針小棒大に言っているけれど、我らは、女子供・民間人を含め、数千、あるいはそれを超える万の単位、殺されている」 と不満をあらわにした。このバグダディの霊言は、『 イスラム国“カリフ"バグダディ氏に直撃スピリチュアル・インタビュー 』(大川隆法著 幸福の科学出版刊)に収録されている。欧米諸国や日本へのやり切れぬ思いなど、マスコミでは決して報じられないバグダディの本音を知ることは、冷静な議論を進める一助となるだろう。

欧米に「悪魔」呼ばわりされた70年前の日本

見方を変えれば、こうした「イスラム国」が置かれている立場は、欧米の植民地支配を打ち破るために戦った70数年前の日本と極めて似ていると言えないか。日本は富国強兵政策で国力をつけ、正当な方法で欧米に立ち向かったが、欧米から悪魔扱いされ、原爆や大空襲などで多くの民間人が虐殺された。

「イスラム国」が絶対悪とされる風潮の中では、現実にどれだけの民間人が空爆で殺されているかは明らかにされないが、欧米のような近代兵器を十分に持たない彼らの抵抗手段は限られている。

大川総裁は、『 スピリチュアル・エキスパートによる徹底検証 「イスラム国」日本人人質事件の真相に迫る 』において、 「日本に原爆を落としたいという気持ちは、このイスラム国に対する憎しみとほとんど同じぐらいのものを持っていたと思うんですよね。民間人を皆殺しにするのだから、よっぽど悪魔の塊でもいると思わなければ落とせるものではない」 と、「イスラム国」を悪魔の化身と断定する風潮に一石を投じ、感情的になりすぎることの危険性を指摘。

「イスラム国が一定の大義を掲げていることに対して共鳴している者がいるらしいということについて、テロ指定している人は理解していないので、イスラムそのものが原罪的に悪と思っているところが若干あるのではないかという気がする」 と、「イスラム国」を壊滅させようとする動きが、イスラム教徒の排斥運動につながっていきかねないことについて警鐘を鳴らした。

日本は「世界的正義」を示せ

現在の「イスラム国」の問題をはじめ、パレスチナ問題等の中東における紛争の根底には、キリスト教・ユダヤ教とイスラム教との宗教的対立がある。

大川総裁は『 スピリチュアル・エキスパートによる徹底検証 「イスラム国」日本人人質事件の真相に迫る 』の解説で、 「キリスト教国による、イスラム圏の分断作戦は確かにあるかもしれない。イスラエルのために共闘できないようにしているかもしれない」 と述べた。

こうした背景を見れば、「欧米が正義」で「『イスラム国』が悪魔」という見方は一方的で、バランスを欠いているといえる。

このまま「イスラム国」を壊滅させたとしても、お互いの不信と憎しみを取り除かない限り、第二、第三の「イスラム国」は出てくるだろう。バグダディの霊も、自らが倒されても次の勢力が出て、新たな争いが起こることを示唆した。

こうした争いの連鎖を止めるために必要なものは、「ワールド・ジャスティス(世界的な正義)」を見抜く智慧である。宗教的、歴史的、民族・人種的な視点から議論しなければ真の正義は分からない。

欧米諸国は、過去の植民地政策や日本への原爆投下をはじめとする「ホロコースト」を反省し、人種差別的な価値観を改めていくべきだ。一方、イスラム教国には、女性に対する扱いや経済発展を止めている戒律や慣習など、多くの面でイノベーションが必要だ。そしてまた、世界宗教はひとつの神の心から流れ出てきたという宗教的真実にも目を向けなくてはならない。

日本が今なすべきは、憎しみを増幅させることではない。キリスト教にもユダヤ教にも、イスラム教にも敵対していない日本こそ、世界のリーダー国家として「ワールド・ジャスティス」を指し示し、悲劇の連鎖を止める使命を果たすべきだ。

【関連書籍】

幸福の科学出版 『スピリチュアル・エキスパートによる徹底検証 「イスラム国」日本人人質事件の真相に迫る』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1415

幸福の科学出版 『イスラム国 "カリフ"バグダディ氏に直撃スピリチュアル・インタビュー』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1411

幸福の科学出版 『ムハンマドよ、パリは燃えているか。―表現の自由VS.イスラム的信仰―』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1394

幸福の科学出版 『中東で何が起こっているのか 公開霊言 ムハンマド/アリー/サラディン』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=913

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