写真:2020年3月、全米保守行動会議(CPAC)の会場で本誌のインタビューに応えるザイプト氏。(2020年5月号)

 

《ニュース》

「反グレタ」として知られる25歳のドイツ人女性活動家ナオミ・ザイプト氏が、母国ドイツで自身の「政治的見解」を理由に迫害を受けているとして、アメリカに政治亡命を申請したことが、米FOXニュースの取材で明らかになりました(10月28日付FOXニュースデジタル)。

《詳細》

保守系の米シンクタンク「ハートランド研究所」に所属していたザイプト氏は2020年、二酸化炭素(CO2)の増加による気候変動説を唱えるスウェーデンの活動家グレタ・トゥーンベリ氏に対し、科学的知見から疑問を呈したことで「反グレタ」として注目を集めました。

ザイプト氏はSNSなどを中心に、気候変動やコロナ禍で行われたロックダウン政策に懐疑的な発信を続けてきました。また、不法移民による犯罪が増加する中、不法移民対策を求める最大野党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持を表明しています(関連記事:「独情報機関が国政第2党のAfDを『過激派』認定 ─ 言論統制・監視社会化が進むドイツの問題」)。

こうした活動の中、ザイプト氏は通信が傍受され、家族は国営メディアの記者にストーカー行為を受けたほか、何年にもわたりドイツの諜報機関から監視を受けていたといいます。また、極左団体アンティファからの殺害予告を繰り返し受け、警察に相談したものの「実際に殺害されたり強姦されたりしない限り何もできない」として保護を断られたといいます。

現在アメリカで活動しているザイプト氏は、「ドイツに帰国すれば投獄されるか、身体的危害を受ける可能性がある」として今年10月、アメリカに政治亡命を申請しました。ザイプト氏とSNS上で繋がりがあるイーロン・マスク氏は、ヨーロッパの「言論の自由」の衰退に懸念を示しており、同氏に支援を申し出ていると報じられています。

もともとドイツでは、ナチスの台頭を招いた反省から、ヘイトスピーチ(憎悪表現)への取り締まりが厳しく、憎悪や暴力を扇動した場合、最長5年の懲役刑に処せられます。しかし近年は、政治家の名誉を傷つけることは違法とする法律が拡大解釈され、SNS上で与党の政治家を批判しただけで家宅捜査を受け、逮捕されるなどの極端な事例が相次いでいます。

ヴァンス米副大統領はこうした状況に対し、2月にドイツのミュンヘンで行われた安全保障会議で、「(ジョージ・)オーウェル的だ」と非難しています。

トランプ米大統領は、政治的発言や政府の検閲への反対を理由に迫害を受けている亡命申請者を優先する方針と見られ、ザイプト氏の亡命申請が承認される可能性は高いと考えられます。

《どう見るか》