《ニュース》
インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方のうち、インド政府が直轄するジャム・カシミールで22日、武装集団が発砲し、観光客ら少なくとも28人が死亡する事件が起きました。インド政府は23日、「パキスタンがテロを支援している」として、報復措置を取ると発表しました。
《詳細》
現場は、「小さなスイス」とも呼ばれる風光明媚な人気リゾート地パハルガム。犠牲者の大多数はインド人(ヒンドゥー教徒)だとされ、中には新婚カップルもいたといいます。
パキスタンを拠点とするイスラム過激派組織「ラシュカレトイバ」の分派組織「カシミール・レジスタンス」が犯行声明を発表しています。同組織は8万5000人以上の"よそ者(=ヒンドゥー教徒)"がこの地域に定住し、人口構成の変化を引き起こしていると憤っています。
今回のテロを受け、インド政府は「パキスタンが国境を越えるテロを確実に中止するまで、インドとパキスタンの両国を流れるインダス川の水資源の配分を定めた『インダス川水利条約』の履行を停止する」と発表。インダス川の水資源は、パキスタンにとって死活的に重要で、同国にとって大きな打撃となることが予想されます。同条約が停止されるのは初めてです。
他にも、パキスタンとの陸路の国境にある検問所の封鎖や、在印パキスタン大使館の駐在武官の国外退去などの報復措置を発表しています。
ジャム・カシミールは、イスラム教徒の多い地域です。かつては自治権のある州でしたが、2019年に自治権を剥奪され、インド政府の直轄領に組み込まれました。これに反発するイスラム過激派は度々テロを起こしてきましたが、今回の事件は、インドでの民間人襲撃としては、2008年のインド・ムンバイでのイスラム同時多発テロ以来、最悪のものとなりました。
事件が起きたのは、ちょうど米副大統領のJ.D.ヴァンス氏がインド訪問中であったため、世界から注目が集まるそのタイミングを狙った犯行ではないかとも言われています。ヴァンス氏の妻ウーシャ氏はインド系移民二世で、ヒンドゥー教徒。ヴァンス氏と共にウーシャ氏や子供たちもインドを訪れていました。
《どう見るか》