澁谷 司

アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

トランプ米大統領は4月2日、各国への関税を発表した。

4月8日付英フィナンシャル・タイムズ紙は、トランプ関税の政策目標は次の4つだと指摘した(*1)。(1)米国の対外貿易の均衡、(2)米連邦政府の財政収入の増加、(3)米国製造業の再構築、(4)米国の地政学的優位の確立、である。

(*1)2025年4月4日付『中国瞭望』

トランプ関税は中国覇権へのけん制

特に重要なのが(4)米国の地政学的優位の確立だろう。今後、中国が米国の世界的ヘゲモニーを脅かす存在となる公算が大きい。そこでトランプ氏は中国に対し、強硬な態度を取っているのではないか。

同氏は対中関税をさらに34%引き上げる相互関税の実施を公表した(*2)。既存の20%の関税と合わせると、米国の対中関税は54%に達する(その後の展開については後述)。

同時に、中国本土と香港からの800米ドル(約12万円)未満の小包に対する米国の免税措置も中止される。

モルガン・スタンレーや野村證券などの国際的金融機関は、中国製品に対する米国の平均関税率は既存の関税が加わり、過去最高の65~66%に達すると見積もっている。

トランプ政権の計算によれば、現在、中国の米国製品に対する平均関税率は約67%である。米国は、この相互関税引き上げによって双方の関税レベル全体が同等になると考えている。

(*2)2025年4月8日付『FT中文網』

中国の迂回輸出径路も塞ぐ