米トランプ政権高官のグループチャット漏洩事件を千載一遇のチャンスとして、民主党勢力はトランプ政権を攻撃し、訴訟なども起こしているが、大きな動きには発展していない。

民主党は昨年11月の大統領選敗北以来、有権者の支持率は更に激減し、3月16日に発表されたCNNの世論調査では、1992年以来最低の29%を記録し(不支持は54%)、同日発表されたNBCの世論調査では、1990年以来最低の27%を記録(不支持は55%)。3月31日に発表されたハーバード大学アメリカ政治研究センター/ハリス世論調査でも、支持率が37%で、民主党に批判的な見方の人の割合は63%に上っている。

元クリントン政権世論調査担当のマーク・ペン氏は、「この40年以上、民主党がここまで落ち込んだのは見たことがない」と発言し(3月21日 FOX News)、政治風刺で有名なコメンテーター、ビル・マー氏は、自身がホストを務める番組で「ここまで酷い民主党は見たことがない。『ゲーム・オーバー』に見える」と発言し(3月21日 HBO放送)、話題となった。

チャック・シューマー上院院内総務(民主党の上院代表)は、トランプ大統領の意向を汲んだ共和党つなぎ予算案に協力し、上院での可決に導いたため(3月14日)、民主党左派から猛烈な非難を浴びて辞任を迫られ、民主党内は、左派と中道派で分裂状態となった。

このように内部崩壊状態にあるとも言える民主党は、声を上げて叫ぶことくらいしかできず、4月6日には、全米各地で、左派グループが中心となったアンチ・トランプデモも行われた。

民主党のコリー・ブッカー上院議員は4月1日、上院で史上最長となる25時間以上にわたって(議場での主導権を失わないよう、トイレにも行かず)、トランプ政権批判の演説を行い、話題になった。

ブッカー氏は演説の冒頭で、「肉体が許す限り、上院の通常業務を混乱させる意図を持って私は立ち上がった」と指摘。トランプ政権が無謀にも民主制度に挑戦しており、憲法に違反していると主張し、政府効率化省(DOGE)率いる実業家のイーロン・マスク氏が連邦政府機関の解体を進めているなどと批判した。

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上院で演説するブッカー上院議員(画像はブッカー氏のXの動画より)。

民主党は、下院でも上院でも少数派のため、議会でも共和党に反撃できない。そのため、電気自動車大手のテスラ社最高経営責任者を務めるマスク氏への攻撃として、過激左翼による明らかに組織的なテスラ車や販売店への破壊行為(車の放火が多い)などが続けられている。不買運動により世界のテスラ車の販売台数は激減した。

また、SNS上では、極めてリベラルなエリート女性が起こした事件が話題になった。ニューヨーク市マンハッタンのミッドタウンで3月末に、地下鉄の電車内で高級ブランドのクリエイティブ・ディレクターの女性が、「アメリカを再び偉大に(MAGA)」帽子をかぶったトランプ支持の黒人と思われる男性に対し、「もしお前がトランプに投票したなら、お前は人種差別主義者だ!」「その帽子を被るのは教育を受けていない人だけだ」などと怒鳴り散らした。男性が電車を降りると、女性は男性に飛び掛かってMAGA帽子を奪おうとしたが、転倒して床に顔面を打ち付けた。この事件は動画に撮られており、SNS上で500万回以上再生された(3月29日付ニューヨークポスト電子版)。

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画像はニューヨークポストの動画より。

ただ、激戦州の1つであるウィスコンシン州の最高裁判事を選出する選挙では、民主党判事が勝利。民主党にとっては久しぶりに勝利のニュースとなった。ウィスコンシン州の最高裁が保守系かリベラル系になるかによって、選挙区の設定や、将来の不正問題などでの判断に大きな影響を与えるため、以前から非常に大きな話題となっており、マスク氏も2000万ドル(約37億円)もの献金を通じて参戦していた。

一方、同じく4月2日に行われたフロリダ州選出の下院議員2議席の補欠選挙(マイク・ウォルツ大統領補佐官とマット・ゲイツ氏が抜けた分)は、2議席とも共和党候補が勝ち、フロリダ州はレッドステート(共和党支持の多い州)として定着した。

主要メディアで報道されないマスク氏の発言「数百億ドルの行方が分からない」