2025年3月号記事

トランプ大統領の筆頭後継者

JD・ヴァンス米副大統領とは何者か

日本ではあまり報じられることのない米副大統領JD・ヴァンス氏。
だが彼こそ、ネクスト・プレジデントの筆頭候補かもしれない──。

2024年7月13日。演説中のトランプ氏を銃弾が襲う。直前に同氏が頭を動かしていなければ即死。奇跡的に死を免れたのだった。そして事件の直後、彼は副大統領候補を指名する。

JD・ヴァンス氏である。

現在40歳の新進気鋭の若手政治家だ。

副大統領は大統領が死亡した場合、直後から大統領として職務を遂行する重要ポスト。大統領の右腕と言える存在だ。だが、この指名は通例からすると異例である。

異例の副大統領指名人事

これまで大統領候補者は、党内で自分とある程度離れた政策や支持母体を持つ人物を副大統領として指名し、大統領選で幅広い層からの集票を狙うのが定石とされてきた。

実際、中道左派のバイデン前米大統領は前回の大統領選で、極左思想を持つハリス氏を副大統領に指名した。同氏は有色・女性であることを前面的にアピールすることで人気を博しており、同氏と組むことでバイデン氏は集票を目論んだ。だが実際は政策の不一致などから、両者の仲は険悪だったことで知られる。

しかし、ヴァンス氏はトランプ氏の掲げる政策へ全面的な支持を公にし、今回の大統領選でも精力的にトランプ氏に協力してきた。つまり、トランプ氏がヴァンス氏を副大統領に指名することは、「集票」という観点では悪手ではないにせよ、「負けられない大統領選」で集票を第一目的にするならば、最善手でもなかったのである。そのため副大統領候補レース序盤、ヴァンス氏の指名を予想した人間はそう多くはなかった。

それでもトランプ氏はヴァンス氏を副大統領に指名した。

なぜだろうか。

第二の建国の理念を継承する人材

もちろん優秀な人材はほかにも複数いる。だがすでに大統領を4年務めたトランプ氏には、憲法の規定で4年という限られた任期しか残されていない。そして今後も暗殺の危険がつきまとう。

そのため改革は間違いなく急ピッチで進められる。トランプ氏は大統領就任初日から大量の大統領令を発令すると見込まれ(記事執筆時)、就任前から各国の重鎮は「トランプ詣で」を始めたほどだ。

それでも4年という期間はやはり短い。限られた時間、そして当然計算に入れているであろう自身の暗殺リスクなどに鑑みれば、同氏が暗殺未遂事件直後にヴァンス氏を副大統領に指名したことは、同氏を「後継者として最有力視している」と考えて差し支えないだろう。指導者とは「後継者養成」を万全に行う人物だ。だが養成には年数を要し、トップの「徳」が最も表れるとも言われる。

すでに米ウォール・ストリート・ジャーナル紙や米ニューヨーク・タイムズ紙は彼を「apprenticeアプレンティス」、つまり「大統領見習い」と形容した

18世紀のアメリカ独立革命が、「自由の創設」となり新国家建設に成功したのは、後継の建国の父らが初代大統領の理念を継いだからである。

トランプ氏が目指す「偉大なアメリカの復活」。その第二の建国の理念を受け継ぐに足る筆頭候補に指名されたのがJD・ヴァンス氏なのだ。同氏の真の姿に迫ることで今後のアメリカ政治を占う。

※文中や注の特に断りのない『 』は、いずれも大川隆法著、幸福の科学出版刊。

 
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