アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
2023年末のクリスマス、中国の著名な経済学者、李迅雷が同国最大の経済メディア『第一財経』で「山を登るのは簡単だが、下るのは難しい? 需要側から見た経済」という論文を発表した(*1)。
李迅雷は、中国は「豊かになる前に老いる」という圧力に直面しており、将来、住宅購入の有効需要が不足する公算が大きいと語っている。
また、李迅雷は北京師範大学中国所得分配研究院が2021年に発表した調査データを引用し、中国の月収2000元(約4万円)以下の人口は約9億6400万人だと述べた。
李迅雷は、記事の中で「不動産」「地方債務」「中小金融機関」等のリスクについても取り上げ、これらが、経済が下り坂となり、「下山する」際の"3大危険要因"だと指摘(*2)した。
経済減速の過程で、これら3つの隠れた大きな要因がシステミック・リスクを引き起こさないようにするためには、十分な有効需要を確保する必要がある。
そのためには、中低所得者の所得を増やし、社会保障の水準を引き上げるなどして、市場における将来に対する期待感を高めるべきであり、「家電を地方へ」といった宣伝手段だけに頼るのでは不十分だという。
(*1) 2023年12月27日付『FRA』
(*2) 2023年12月26日付『中国瞭望』
李克強前首相の発言を思い出させる
李迅雷の「約10億人近くの人が月収2000元以下」という指摘は、ネット上で様々な議論を呼び起こした。