《ニュース》

「中国政府が今夏に極超音速ミサイルの発射実験を行った」とする英紙フィナンシャル・タイムズ(以下、FT紙)のスクープに対して、複数の米軍高官が、中国が実験を行ったと認めた上で、中国の驚異的な軍備増強スピードに強い懸念を強調しました(スクープについては関連記事参照)。

《詳細》

複数の米メディアによると、米軍制服組のナンバー2であるジョン・ハイテン統合参謀本部副議長が28日、国防担当の記者団らに向けて、中国による極超音速兵器の発射実験に関して「行われた」とした上で、「とても懸念される状況だ」と述べました。

ハイテン氏は凄まじい勢いで行われる中国の軍事拡張に関して、このままのペースで進めばアメリカを軍事力で凌駕するとの認識を示し、一方でアメリカの兵器開発およびそれを進める国防総省が「信じられないくらい官僚的で遅い」と、開発速度の差に警鐘を鳴らしました。

加えて極超音速兵器に関して、当初はアメリカが開発をリードしていたが、実験失敗によって計画が一時中止に追い込まれてしまい、現在は中国が先行していることを明らかにしています。ハイテン氏によると過去5年ほどの間で、米軍は極超音速兵器の実験を9回しか行っていないのに対し、中国は数百回も実験を重ねているとのことです。

これに先立ち27日、ハイテン氏の上司にあたる米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は米ブルーム・バーグのテレビインタビューで、中国政府による実験実施を、米当局者として初めて認めました。

その上で今回の実験が、かつて米ソ冷戦中に、ソ連がアメリカに先駆け人工て衛星打ち上げに成功した「スプートニク・ショック」の衝撃と「極めて近い」とし、深い憂慮を示しました。

FT紙がスクープした夏の実験で、中国は地球を周回する軌道に核弾頭搭載可能な極超音速滑走体を投入したとのこと。これはつまり、理論上は「地球のあらゆる場所を宇宙から攻撃できる」ことを意味します。

もちろん攻撃対象にはアメリカ本土も含まれ、ミサイル防衛システムによる守りが手薄な南極圏からの攻撃も可能になります。

こうした状況を受けてなお、バイデン政権が及び腰で中国を批判できずにいる中、米軍内で危機感が高まっています。

《どう見るか》