フランス調査報道機関メディアパルトは1日、フランス検察が人道に対する罪の隠蔽の疑いで、ユニクロのフランス法人など4社の捜査を始めたことを報じた。

報道によれば、ユニクロのほか、ZARAを展開するスペインのアパレル大手「インデックス」、アメリカの靴大手「スケッチャーズ」、フランスのアパレルブランドを所有する「SMCP」の4社が捜査対象になっている。

ユニクロを展開するファーストリテイリング社は5月に、「生産過程で強制労働などの問題がないことが確認されたコットンのみを使用している」とコメントしている。今回の捜査に関しては、「詳しい状況を確認中だ」とし、いかなる強制労働も容認しないとしたうえで「サプライチェーンも含めて人権侵害を生じさせない体制の構築を行っている」と発表した。

「綿の原材料が強制労働と関係ない」を証明するのは、ほぼ不可能

しかし注意しなければならないのは、中国から綿の原材料を使用している限り、ウイグル強制労働に関与していないことを証明することは、ほぼ不可能と言ってよいほど困難であることだ。

ユニクロの綿シャツの輸入は、米ロサンゼルス港でも差し止められたが、同社は米国税・国境警備局(CBP)に製品の生産工程の情報などを提出していた。しかし米当局は「証拠不十分」として、同社の主張を退け、輸入を禁止したのだ。

というのも、綿の原材料の生産過程は極めて複雑で、原産地を最初期までさかのぼって特定することは困難をきわめる。直接の取引先の企業がウイグルの強制労働に関与していなかったとしても、それだけではその先の原材料購入元まで関与していないことを証明したことにはならない。しかもそのような中国国内の取引状況の調査は中国政府に監督されている中国の国内機関に依頼せざるを得ず、率直なところ信用のおけるものではない。アメリカの通関当局からは、まさにその不備(出来レース?)を突かれた訳であり、フランス当局も、こうしたアメリカの調査基準を踏襲すると見られることから、ユニクロに対して厳しい措置が取られる可能性が高い。

したがって、中国共産党の傘下組織でウイグル綿花の生産団体としてアメリカ政府に制裁された「新疆生産建設兵団(XPCC)」が、ユニクロで使用された綿花の生産に関わった疑いは、ユニクロ側の説明では全く拭えていないのである。中国で事業を展開している限り「ウイグルの強制労働と関係がない」と簡単に証明することは難しい。

儲けるために人権弾圧を無視する態度はもう許されない

アパレル企業の供給網にウイグルの強制労働問題が関係している疑いをめぐり、ファーストリテイリング社の柳井正会長兼社長が「我々は政治的には中立な立場でやっていきたい。ウイグルに関してはそれこそ政治的なことなのでノーコメント」と発言。新彊綿を使用していないと明言しなかったことから、同社への猛烈な批判が巻き起こったばかりだった。

欧米諸国を中心にウイグルのジェノサイドに対して制裁を発動しているなど、中国政府による人権弾圧に向けられる批判が激しくなっている。それに比例して、中国で事業するリスクも日に日に高まっており、「儲けるためには人権弾圧にも口をつぐむ」という企業の態度は通用しなくなってきている。

本紙2021年8月号で詳述した通り、中国をいたずらに太らせた「ユニクロモデル」は、改める時がきている。今後、日本は中国への制裁も念頭に置いて、人権弾圧への非難の姿勢を明確にするとともに、中国に頼らない企業活動が可能な国を目指すべきだ。

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