新疆ウイグル自治区の強制収容所と見られる施設〈左〉とナチス・ドイツ占領下にあったポーランドのアウシュヴィッツ=ビルケナウ絶滅収容所〈右〉。どちらもジェノサイドの舞台だ。写真:AFP/アフロ、CL-Medien / Shutterstock.com

2021年6月号記事

静観する日本政府は人類の恥

ウイグルは「アウシュビッツ」を超えた

中国共産党が「再教育施設」と称する強制収容所でウイグル人にしていることは、
ナチスが収容所でユダヤ人にしていたことと、あまりに似ている。
いやもうすでに、それをはるかに超えてしまっている。

「建物内では一日中、悲鳴が響き渡っていた」

中国・新疆ウイグル自治区の強制収容所から生還した人々は、一様にそう証言する。そこでは何の罪もないウイグル人が、ほぼ無差別に、大量に収容され、拷問・強姦され、発狂し、そして亡くなっていく──。

本誌でも数年来報じ続けてきたその実態が昨今、英BBCなどの大手メディアでも報じられ始めている。主要国も動き出し、今年1月、米政権が「ジェノサイド」と認定した。カナダやオランダの議会も同様に認定する動議を可決。欧州連合(EU)も人権侵害に対し、天安門事件以来の対中制裁を打ち出した。世界の空気が、変わりつつある。

「ジェノサイド」と言われても、多くの日本人はピンと来ないかもしれない。これはよく「大量虐殺」と訳される。しかし厳密には"特定の民族を絶滅させる目的で虐殺する"という、次元違いの行為を意味する。第二次世界大戦を契機として、ユダヤ人弁護士が提唱した用語だ。もうお分かりだろう。これは、アウシュビッツ収容所に象徴される、ナチスのホロコーストを指す概念だ。

つまり各国の「ジェノサイド認定」は、「国際社会が76年間、『二度と繰り返さない』と誓い続けてきたその悲劇が、いよいよ人類の前に姿を現している」という"緊急警報"を意味する。

「粛清」ではなく「絶滅」

実際、見れば見るほど、ウイグル収容所での弾圧は、ナチスがやっていたことと似ている。

あるウイグル人女性が、「海外の誰かと電話で話した」との容疑で逮捕された。それが罪になること自体が不可解だが、そもそもこの女性は、電話を持っていなかった。彼女は収容所で尋問され、「罪を反省する用紙」に「かけていない電話で告発された」と書いた。するとそのまま別室に連れていかれ、出てきた時には全身血だらけ。手の爪が全てなかった。ある生存者の証言だ。

ウイグル人が強制収容所に連れて行かれるのに、さしたる理由は要らない。こうした言いがかりもあれば、イスラム教を信じている兆候があるだけでも拘留される。日本ウイグル連盟会長のトゥール・ムハメット氏は、編集部の取材にこう語る。

「1980~90年代生まれであるだけで『危険代』と呼ばれ、収容所行きの要件になります」

600人いた地域から2年間で190人が連れていかれたという証言もある。

つまりそこで行われているのは、「体制に歯向かった反乱分子の粛清」とは次元が違う。"その層に属している"だけで、まるでブルドーザーが土砂をかくかのように収容されるのだ。

なぜそのようなことをするのか。目的が「絶滅」だからだ。

 

次ページからのポイント

日本ウイグル連盟会長 トゥール・ムハメット氏インタビュー

新鮮な臓器を取るため中国全土に囚人を分配している!?

「制裁」しない日本政府は人類の恥