沖縄で行われている「反基地・反本土運動」の延長線上には、中国共産党による沖縄侵略という最悪のシナリオがある──。

本誌2018年3月号「今の沖縄は侵略された『あの国』そっくり!?」の記事では、基地問題で揺れる今の沖縄と、中国の自治区となったチベットの併合前夜とを、比較検証しました。

本欄では、本誌に載せきれなかったチベット文化研究所名誉所長のペマ・ギャルポ氏のインタビューを掲載します。

チベット文化研究所
名誉所長

ペマ・ギャルポ

プロフィール

1953年、チベット・カム地方に生まれる。6歳でインドに脱出し、12歳で日本に留学。76年、亜細亜大学法学部卒業。2005年、日本に帰化。現在は、拓殖大学教授、桐蔭横浜大学大学院教授、チベット文化研究所名誉所長、アジア自由民主連帯協議会会長などを務める。近著に『2020年、世界の覇権争い』(あさ出版)がある。

──沖縄県名護市辺野古の新基地建設をめぐり、埋め立ての賛否を問う県民投票が2月24日に実施される予定です。この動きをどのようにご覧になっていますか。

ペマ・ギャルポ氏(以下、ギャ): 本来、国家の安全保障に関することは、地方で投票して決めることではないと思います。

現在、米中は冷戦以上の激しい争いをしています。米中貿易戦争も、単なる経済戦争ではなく、"目に見えない戦争"です。

中国は、思想、経済、文化などを通して、世界覇権を目指しています。「ゆくゆくはアメリカから東シナ海と南シナ海を取り返したい」と考えており、東シナ海を押さえるために、沖縄の独立運動を裏で煽っているのだと思います。

──中国は、香港や台湾に対する影響力も強めていますね。

ギャ: 中国とイギリスは1984年、香港返還をめぐって基本合意を結び、その際、中国は「1997年から50年の間、香港の制度に手を加えない」と一国二制度を約束しました。しかし、現在の香港では、自由が制約され、香港議会は親中派が多数を占めるなど、"中国化"が着々と進んでいます。

これは、チベットのパターンと同じです。かつて中国は、チベットには外国人が数名しかいないにもかかわらず、「西洋諸国の帝国主義から守る」と、チベットに軍事侵攻してきました。中国はチベットと、十七カ条協定を結び、「ダライ・ラマ法王を頂点とする制度に手を加えない」と約束しましたが、たった7年でその約束を破りました。

十七カ条協定を結んだのは1951年で、ダライ・ラマ法王がインドに亡命したのは57年です。香港では2014年、民主化を求める学生運動「雨傘革命」が起きました。中国は、チベットとの約束は7年、香港との約束は17年で破ったわけです。

また、中国の習近平国家主席は1月2日、「台湾を必ず統一する。武力も放棄しない」と演説しました。

日本の新聞は、「習主席は平和的統一を目指している」という見出しをつけて報じました。「平和的統一」というのは一見平和的なイメージですが、実際は武力が背景にあるわけです。平和的であろうと、武力であろうと、「台湾を取る」というのは同じです。

台湾の人たちの総意が、「中国の一部になる」というならまだしも、どう考えても台湾は「独立国家」です。領土・人民が存在し、政府も機能しています。"主権国家"に対して、「自分たちのものだから取る」という勝手な姿勢は、許されるものではありません。

──香港や台湾と同じく、沖縄も、中国に虎視眈々と狙われています。しかし、沖縄では反基地運動が盛んで、米軍を追い出そうとしています。

ギャ: 沖縄の基地問題に関しては、騒音問題などには配慮が必要でしょう。しかし、「基地そのものをどうするか」については、国家の安全保障と軍事戦略に基づいて、国が考えなければならない事項です。マンションの玄関にセキュリティカメラがあるように、日本の玄関である沖縄には、基地がなければなりません。

「沖縄だけに負担をかけている」という政治家は、偽善者だと思います。「沖縄がかわいそうだ」と思うなら、「かわいそうでない状態をつくればいい」のです。

例えば、国が援助して、本土から沖縄に行く航空料金を安くすれば、本土との結びつきを強めることもできるはずです。今は、本土から沖縄に行くより、中国に行った方が安いはずですが、このような状態ではいけません。また沖縄の交通インフラも不便なので、利便性を高める必要があります。

政府は、沖縄県民に対して、「沖縄に米軍基地がなければならない理由」について、きちんと説得する必要があるでしょう。そして沖縄の人たちが、胸を張って「私は日本人だ」といえる社会にすることが大切です。(談)

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2019年3月号 現地ルポ - 今の沖縄は侵略された「あの国」そっくり!?

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2019年2月3日付本欄 「沖縄の現状」についてどう考えるか 八重山日報・編集長に聞いた

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