《本記事のポイント》

  • 米中貿易戦争が本格化するのに合わせ、世界では「中国離れ」が表面化している
  • スズキが中国から撤退するが、提携先の親会社は中国軍事企業だった
  • 日本企業は知らず知らずのうちに、中国の軍拡に手を貸している

米中貿易戦争が本格化するのに合わせ、世界的な「中国離れ」が表面化している。

日本企業は長らく中国市場に力を注ぎ、利益をあげてきたが、その動きに歯止めをかけなければならない。特に、多くの企業が進出する自動車産業では、スズキが年内に中国の生産から手を引き、日本勢初となる中国市場からの撤退に注目が集まった。

日本企業が合弁する親会社は中国軍事企業

実は、スズキと合弁していた中国自動車メーカー、長安汽車の親会社は、大手軍事企業「中国兵器装備集団」だった。こうした軍事企業と関係が深い分野での経済協力は、他の企業でも見られる。

例えば、中国の「保利集団」は、軍事関連製品の貿易を行う企業として知られている。総経理(社長に相当)の賀平氏は故・トウ小平氏の娘婿であり、中国人民解放軍出身だ。同社はロジスティクスの分野で、日本の佐川急便と提携し、興行イベント分野では、ぴあとともに合弁企業を設立している。

また、製造業を担う三菱重工業は、中国の舶用機器メーカー、九江海天設備製造とライセンス契約を結んでいる。九江海天設備製造の親会社は、解放軍系の「中国船舶工業集団」。そして、ダイハツディーゼルと三井造船が共同開発したガスエンジンも、安慶中船柴油机にライセンス供与されており、安慶中船柴油机も船舶工業集団の傘下である。

ソフトバンク子会社が中国に傾注

通信分野では、中国通信大手ファーウェイの創業者・任正非氏は解放軍出身であり、ZTEも中国軍事企業の情報・通信部門との関係が強いことで有名だ。アメリカでは、中国が通信メーカーを通じて情報を傍受しているとして、ファーウェイとZTEが排除されつつあり、その動きは世界へ拡大している。

安全保障の懸念が高まる通信分野では、ソフトバンクが3兆円以上で買収した英半導体設計アーム・ホールディングス(ARM)は6月に中国事業を合弁化し、中国ビジネスに注力しようとしている。これに対し、EUでは技術流出の声が上がるなど、同社の判断は世界的な流れに逆行しているといえよう。

中国では、解放軍と太いパイプでつながる企業が多く、日本の技術がそのまま中国の軍事拡張や国威発揚のアイデアに流用されているのは想像に難くない。

先述した事例は氷山の一角であり、日本企業は知らず知らずのうちに、中国の軍拡や人権弾圧に手を貸し、間接的に支援しているのだ。日本企業はすぐにでも、中国依存度を下げ、リスクを分散させる方向に舵を切らなければならない。

(山本慧)

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