2017年5月号記事

第56回

釈量子の志士奮迅

幸福実現党党首

釈量子

(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。

釈量子のブログはこちらでご覧になれます。

http://shaku-ryoko.net/

二宮金次郎がスマホに負ける!?

かつては多くの小学校に立っていた、一般的な二宮金次郎像。写真:kochi/PIXTA(ピクスタ)

神奈川県小田原市の小学校にある、座って読書をする二宮金次郎像。写真:読売新聞/アフロ

最近、こんな学校の話にずっこけてしまいました。

小学校の"御本尊"とも言える二宮金次郎の像が、"座ってしまった"というのです。「歩きスマホを誘発する」という保護者からのクレームがあったためというのですが、金次郎の故郷・小田原市の小学校でも座り姿になったと聞き、心配になりました。

ご存知、金次郎は幼くして父母が亡くなり、預けられた伯父の家で言いつけられた仕事を真面目にこなしつつも、寸暇を惜しんで書物を読みました。その勤勉さゆえに、長じてから村や藩の財政の立て直しに成功し、報徳二宮神社に神として祀られるほどの尊敬を受けたのです。

日本の資本主義精神の土台を創った偉人であり、薪を背負いながら学問に勤しむ姿は、勤勉さという美徳の象徴です。

しかし、座ってしまえば、ただの休憩時間。これでは、幼少時に培うべき努力の習慣の大切さが伝わらなくなります。

崩れる活字文化

実際、「勤勉に読書・学問に勤しむ」といった美徳は、子供たちの中で失われつつあります。

「小学校の朝読書の時間、スマホを許可したら、女子は恋愛小説を読んでいましたよ」

先日お会いした教育関係者が、ため息混じりに語っていました。ケータイ小説でも読んでいればいい方で、立ち歩くなどして、集中できない子供も多いそうです。

「小学生だから」と思いきや、大学生の半数も、最近は「月に一冊も本を読まない」という調査結果が出ています。

スマホが時間を奪っていく

かく言う私も、読書量が減りかねない危機感を持っています。仕事柄、メールで仕事のやりとりをしたり、SNSで情報発信する必要もあり、スマホは手離せません。また電車の乗り換え案内や、食材から料理のレシピを検索するアプリなど、一昔前の煩わしさを考えるとこの上なく便利な機能が増えています。

しかし、便利であるがゆえに、うっかりしていると、スマホに取って代わられる時間があまりにも増えてしまいます。

結果どうなるか。例えば、幸田露伴の書いた二宮金次郎伝を一冊じっくり読むのと、ネットでサクサク「二宮金次郎」を検索して済ませるのとでは、理解の深さ、人生観の深みなどは、格段に違ってきます。その積み重ねで、人間としての厚みが大きく左右されてしまうのです。

大川隆法・幸福の科学グループ総裁が発刊した霊言集の中で、私が最も衝撃を受けたもののうちの一冊は『心を練る 佐藤一斎の霊言』(*)です。明治維新の原点と言われる大儒学者・佐藤一斎先生の霊は、「(スマホやインターネットを) 使わされて自分の時間をどんどん失っている者たちは、実は『奴隷階級』に落とされていることが分かっておらん」「日本経済の停滞の原因は、スマホやインターネットにある 」と警鐘を鳴らしているのです。

腰を据えて書物を読み解くには根気が必要です。しかし、だからこそ教育において、二宮金次郎の勤勉の精神を今一度教えなければいけません。

(*)幸福の科学出版刊 『心を練る 佐藤一斎の霊言』 大川隆法著

「天下り」「森友」に思う

これまで優秀な日本人を育ててきた教育も、時代に合わせたイノベーションが必要です。

学校での「道徳教育の強化」が謳われていますが、まず、教育行政に関わる方々が「徳ある人」であるかを問いたいと思います。「文部官僚の天下りあっせん疑惑」や「森友学園問題」など、教育機関の認可に関わる事件が続いています。また、いじめられて泣き寝入りする生徒・保護者も後を絶ちません。教育に携わる大人たちが、善悪の観念を持っているかを考えなければならないと思います。

もう一つ必要なのは、教育の自由化です。

塾に行かずに中学受験に挑戦するドラマが人気を博していましたが、公教育がニーズに応えられていないことを改めて感じました。高度な学習のためには、塾や家庭教師との"二重生活"を送るしかなく、子供は体力的に、保護者は金銭的に疲弊しています。

高校授業料の無償化や奨学金基金の創設もいいのですが、本当に教育の質を高めたいのであれば、「学校事業参入の自由化」、学校を自由に選択できる「バウチャー制」、「飛び級の検討」などを、今すぐにでも議論の俎上に載せたいところです。

今学校に通っている子供たちは、21世紀の日本を支える屋台骨となる「人財」です。今こそ、教育のイノベーションについて考えようではありませんか!