国立社会保障・人口問題研究所は、結婚や出産に関する意識などを調べる「出生動向基本調査(2015年)」を15日、発表した。

調査によると、夫婦が望む子供の数の平均は2.32人、現実に予定している子供の数は2.01人と、調査が始まった1977年以降で、いずれも過去最低だった。ほぼ子供を産み終えた夫婦の平均出生数を示す「完結出生児数」も1.94人と最低を更新した。

子供を育てるためにはお金がかかる

夫婦が望む子供の数よりも、現実の数が少ない理由は、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が56.3%で最多だった。また、第一子の出産後も働いている妻の割合は、これまでは4割前後で推移していたが、今回の調査では53.1%と大きく増えている。

こうした調査結果からは、子供の養育のために共働きをしており、2人目を持つのは難しい状況にある夫婦が増えていることがうかがえる。

保育サービスの自由化を

そんな夫婦を応援するには、何が必要なのか。

自民党は、待機児童問題の解決に税金を投入し、保育士の給料を上げ、保育所を増やす政策を打ち出している。しかしこうした政策では、国の財政への負担は増える一方だ。

現在、保育所を設置するには規制があり、保育サービスの提供側は、国から認可を受けなければ、安価で事業をすることが難しい。これでは保育所の数も足りず、手ごろな金額でサービスを受けることも難しい。

ならば、志ある企業や団体が自由に保育所をつくれるように規制緩和が必要だ。もちろん、保育を担う人や施設、安全面などの情報開示を義務化し、利用者側が安心して利用できる環境を整えることは必要になる。

保育サービスの自由化が進めば、駅に近い保育所や企業内の保育所、地域の方のベビーシッターなど、子育てに多様な選択肢が生まれ、母親も育児と仕事を両立しやすくなるだろう。

家族の絆は国家財政をも救う!?

今回の調査では、結婚に関する興味深い結果も出た。

18~34歳の未婚者で「交際相手がいない」人は、男性では約7割、女性では約6割であり、いずれも増加傾向にある。内閣府経済社会総合研究所の予測では、2030年には、男性の生涯未婚率は29.5%、女性は22.5%になるといわれている。

現代は、女性の社会進出が進んだことで、男女ともに職業選択の幅が広がった。各人の人生設計がより自由になり、職業においても家庭においても、才能を生かし、自分らしい生き方ができるようになったのは良いことだ。

だが、その人生設計の自由が、行き過ぎた「家族不要論」につながらないよう、注意が必要だ。

教育の無料化を主張する政治家もいるが、もし教育が全て無料になり、さらには、社会保障の充実が行き過ぎて老後の面倒をすべて政府が見てくれるような社会になれば、それは、家族がいらなくなる流れでもある。日本の財政赤字も増えていく一方だ。

日本では伝統的に、子供が親の面倒を見たり、孫が祖父や祖母の面倒を見たりすることは一般的だった。親が一生懸命働いて子供に教育を受けさせ、その恩を感じながら子供が大きくなって、年老いた親の面倒を見るというサイクルが当たり前のようにあった。

今、年金や医療・介護保険などの社会保障費は年々増え続けている。国の財政問題を解決するカギは、「家族の絆」にあるのかもしれない。

(小林真由美)

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