2016年の年明けから数多くのスクープを連発している総合週刊誌「週刊文春」――。

タレントのベッキーとバンド「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音との不倫を皮切りに、TPP交渉を担った甘利明議員の現金授受、「育休」で有名となった宮崎謙介議員の不倫、経営コンサルタント・ショーンK氏の経歴詐称を立て続けに取り上げている。その勢いは、「文春砲」と呼ばれるほどだ。

タレントの伊集院光氏が、3月21日放送のラジオ番組で、「世の中が文春中心に動いている」と述べたように、「次のスクープ記事は何か」という"期待"が高まっている。

"面白い雑誌"といじめの共通点

そんな中、同誌編集長の新谷学氏が、このほど発売された「編集会議」でロングインタビューに答えている。同氏はこの中で、良い雑誌の条件として、「面白い雑誌は、面白い人や情報が集まらないとつくれません」と述べている。

「面白い雑誌」という表現は聞こえがいいが、記事の中身を見れば、どれも他人の不幸話ばかり。失敗した人を目にして、それをあざ笑う人間の心理と同じだ。社会問題化しているいじめも、加害者の大半が面白がっているために起きていると指摘されている。

他人の人生に土足で入り込み、不幸を拡散する同誌のやり方は、「悪魔的」と言える。また、「雑誌は売れればそれでいい」という考えが優先されてしまえば、良識を重んじるべきジャーナリズムの信頼性に関わる。

週刊文春は信頼性があるのか?

新谷編集長は、「編集会議」でこうも語っている。

「今回、一連のスクープ記事についてネットの書き込みを見ていると、『週刊文春が書いているから本当だろう』という声が格段に多くなっている。こうした信頼性はかけがえのないもので、本当に嬉しく、ありがたく思っています」

だが、同誌がこれまで信頼性に足る報道をしてきたか疑問だ。以下は、同誌の記事が原因で裁判を起こされ、敗訴したもの。

  • 元プロ野球選手・長嶋一茂氏が、父・茂雄氏の肖像権などの管理をめぐり、家族でトラブルになっていると報じられ、東京地裁に提訴。地裁は2014年4月に、440万円の支払いを命令した。

  • 日経新聞の喜多恒雄社長(現会長)が、同紙の女性デスクとの不適切な関係を報じられ、東京地裁に提訴。地裁は2014年7月に、1210万円の支払いを命令した。

  • 元女優・田島美和氏が、暴力団との関係があると報じられ、東京地裁に提訴。地裁は2015年5月に、440万円の支払いを命令した。

これらは同誌が敗訴したごく一部の例だ。自ら読者の信頼を損ねる報道を繰り返してきた過去を見過ごすわけにはいかない。週刊文春に限らず、他の週刊誌にも当てはまるマスコミの問題である。

業界が出版不況に苦しむ今、スクープを連発する週刊文春に注目が集まるのはやむを得ないかもしれない。だが、記事の内容が、国益にかない、社会を良くする方向だったのかが問われなければ、ジャーナリズムの良識が失われてしまう。「言論の自由」は、嘘をつく自由や、他人を傷つける自由ではない。

(山本慧)

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