急速に進む少子高齢化に歯止めをかけようと、中国はこのほど「一人っ子政策」を廃止し、すべての夫婦が2人まで子供を持てるようにした。国家が子供の数を決めること自体おかしいことだが、今回は、一人っ子政策によってこれまでにさまざまな人権侵害が行われてきた実態を紹介したい。

中国は、1950年~60年代にかけて、「産めよ、増やせよ」の出産奨励策を実施し、人口が急増。今度は逆に人口爆発による飢餓などの問題に対応する必要に迫られ、改革・開放政策と共に1979年に導入したのが「一人っ子政策」だった。これを守った人には優遇措置が与えられるが、違反すると厳重な罰金が科されてきた。

一人っ子政策の影響で起きた人権侵害

一人っ子政策の影響によって、一部の地域では、不妊手術や中絶の強制、2人目の子供を妊娠した女性への迫害などの人権侵害が起こり、国際的な批判を浴びてきた。ちなみに、戸籍に登録されていない2人目以降の子ども(黒孩子)は、数千万から1億人近く存在すると言われている。こうした子供たちは、教育、医療、婚姻などが公には認められず、苦しい生活が強いられることが多い。

また中国では、戸籍を都市と農村で分け、都市への人口流入を制限してきた。都市の発展の恩恵を受けられない貧しい農村部では、後継ぎとして男児を望む家庭が多く、超音波検査などで胎児の性別が判別できる技術が普及すると、女児の人工中絶が増加。その結果、出生時の男女比の世界平均が女児100人:男児103~107人であるのに対し、中国は女児100人:男児118人と圧倒的に男児が多く、2014年末の時点で、男性が女性よりも3380万人も多いという。

嫁不足で女性が誘拐され、強制結婚させられている事実

男女比のアンバランスさは、思わぬところにも影響を及ぼしている。

たとえば、男性の数が圧倒的に多いことで、売春によるエイズ感染の拡大が指摘されている。また、嫁不足が生じるため、犯罪組織がロシア、モンゴル、北朝鮮、ミャンマー、ベトナムなどで女性を誘拐し、嫁不足の村に売り飛ばし、強制的に結婚させている実態もある。このことは、中国系アメリカ人のジャーナリスト・ゴードン・チャン氏も、10月29日付の米ナショナル・インタレスト紙で指摘している。

10月に最終審議が行われたユネスコ記憶遺産の登録をめぐって、中国は、日本の慰安婦問題をやり玉に挙げたが、戦争当時、日本軍が組織的に女性を強制連行した事実はない。逆に、中国は、自国で現在進行形で起きている、いや「起こしている」女性の人権侵害を解決すべきである。

現在の中国は、国民が政府の監視下で生活している状況であり、事実上、「刑務所の中の自由」しかない。中国共産党は、「政府は国民の幸福を実現するために存在する」という根本的な考えを学ぶ必要がある。(真)

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