人権擁護を訴える「新公民運動」の中心人物で、公共秩序騒乱罪に問われている、中国の人権活動家・許志永氏の初公判が、北京市内で行われた。23日付各紙が報じた。

許氏は2012年から13年にかけて、中国共産党政府に対し、出稼ぎ労働者の子供を対象とした教育の機会均等や、政府高官の資産公開などを求めた。街頭で横断幕を掲げたり、ビラをまいたりしたことが「公共秩序騒乱罪」とされ、仲間と共に13年7月に拘束された。今回の裁判では、懲役5年の有罪判決が言い渡される可能性が高いという。

習近平政権下の中国では、人権弾圧や言論弾圧が激しさを増している。

一国二制度の香港でも、習近平・国家主席を批判する書籍を発刊予定だった出版社の編集長が、昨年10月から3カ月近く、「密輸容疑」で当局に拘束されている(23日付産経新聞)。また、これまで政府批判を続けてきた香港紙「明報」は、前編集長が事実上、更迭されたことを受け、20日付の紙面で「声と筆が封殺されても屈しないことは自明だ」という見出しのみの、「白紙コラム」を掲載。抗議の意志を示している。

貿易総額世界一になった中国は、他国の政府や企業への影響力を強めている。だが、国際社会はこうした中国の人権弾圧に見て見ぬふりを決め込んでいいのだろうか。中国では、許氏以外にも、多くの人権活動家たちが、不当な理由で拘束されている。

劉暁波氏は、基本的人権を求める長年の非暴力活動が評価され、2010年12月に、中国人初のノーベル平和賞を受賞した。しかし劉氏は、これに先立つ同年2月、他の言論人約300人と連名で、憲法改正、三権分立、言論・集会の自由などを求める「08憲章」をネット上で発表。これが「国家政権転覆煽動罪」に問われ、懲役11年の実効判決を受けていたため、獄中での受賞となった。現在も投獄中だ。

また、「盲目の活動家」として知られる陳光誠氏は、当局が一人っ子政策に則って、女性たちに人工妊娠中絶や不妊手術を強制したことに対して、集団訴訟を起こした。有罪判決を受け、自宅軟禁を強いられたが、19カ月後に脱出し、渡米。現在、米ニューヨーク大で客員研究員を勤めるなどしている。

さらに、北京五輪のメーン会場「鳥の巣」を設計した芸術家・艾未未(がい・みみ)氏は、2008年の四川大地震の際に、小学校の校舎の下敷きになって多くの子供が犠牲になったことについて、ブログ上で政府の責任を追及。その後、当局に81日間拘束されている。

民主主義国家の日本であれば、こうした訴えや追及は、日常茶飯事である。彼らの行為が、一体、どんな「罪」を犯したというのか。ましてや、公共の秩序を乱したり、政権を転覆させたりしようとしているわけではないのは明らかだ。こうした中国の独裁的、抑圧的な体制に変革を迫るべく、国際社会は団結しなければならない。(原)

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