《本記事のポイント》

  • 皇室の聖域を侵す祭祀簡略化
  • 「退位」は、日本神道の伝統を断絶しかねない
  • 日本の伝統を守るためには、20条改正や、天皇の位置づけの変更を検討すべき

4月30日に天皇陛下が退位され、5月1日に皇太子さまが新しい天皇に即位し、「令和」の時代が始まった。

マスコミは報じないが、皇室は危機にある。憲法が定める「政教分離」(20条)により、宮中祭祀が形骸化され、神道の伝統儀式の継承が難しくなっている(※2019年5月号本誌記事を再掲)。

伝統を破壊する憲法

皇室の聖域を侵す祭祀簡略化の動きは昭和に始まり、平成に入って拍車がかかった。

例えば、皇室では毎朝、天皇に代わって宮内庁の侍従が神殿に拝礼している。1千年以上昔に起源を持つこの儀式は、1975(昭和50)年に、神職の着装からモーニング姿に改変された。天皇陛下に仕える侍従は国家公務員であり、公務員は宗教に関与すべきではないという論拠で、「神道色」を薄める目的で行われたという。

伝統の改悪は、平成でも続いた。2009(平成21)年には、陛下が元旦の早朝に行う儀式「四方拝」もモーニング姿の着装に変わった。

表向きの理由は、陛下のご体調を考慮してというもの。もちろん、負担を減らすことは理解できるが、祭祀を簡略化することは本当に陛下のご意思に叶っているのか疑問だ。

今回の「退位(正式には譲位)」も、日本神道の伝統を断絶しかねない問題がある。

陛下は退位されるにあたり、新しい天皇に「三種の神器」を継承する儀式を執り行う。だが三種の神器は、陛下から新天皇に直接渡されるのではなく、いったん式場に置かれ、翌日、新天皇が受け取る形式となっている。退位と即位の間に空白の期間が生じる形式は、日本神道の伝統にそぐわない。

一方、「象徴」という位置づけのもとで、憲法が定める法律の公布などの国事行為に加え、外国や日本各地へのご訪問などの負担は増えている。

「祈り」が最大の公務

陛下が「日本神道の最高神官」としての役割を果たせない元凶は、先述した「政教分離」の規定にある。

その本来の趣旨は、国家が特定の宗教を利用し、他の宗教を弾圧するのを防ぐことにある。にもかかわらず、一部の官僚や憲法学者などは、国家運営から一切の宗教色を排す「宗教と国家の分離」に拡大解釈し、皇室から宗教性を奪ってきた。

陛下にとって最も重要な公務は、「祈り」である。宗教儀式の伝統を断ち切る憲法下では、皇室の存続は難しい。

次の元号でも皇室の未来を守るには、政教分離の文言をなくし、国事行為を伴う象徴としての天皇を、政治介入を受けない「文化的象徴」という位置づけに変える憲法改正が望ましい。

そうすれば、皇室は政治の喧騒から離れられ、神道の伝統や宗教性を取り戻せる。陛下自身も、本業ではない国事行為から解放され、日本神道の神官の長としての仕事に徹することができる。

憲法改正は9条に目がいきがちだが、日本の伝統を守るためには、20条の改正や、天皇の位置づけの変更を検討すべきではないか。憲法の呪縛から天皇陛下を自由にすることが、皇室を守ることにつながる。

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