バイデン民主党は増税ではなく、官民連携でインフラ投資をすべき
2021.04.04
トンネルを掘削する機械。マイアミ港トンネルのためだけに作られた。写真:PORTOFMIAMITUNNEL.com
バイデン米政権は3月31日、8年でインフラなどに2兆ドル(約220兆円)を投資する構想を表明。日本も2021年度予算として106兆円超を計上したばかり。どこも赤字国債や増税で、政府支出を増やしていくが、それは「大きな政府」そのものだ。この傾向に切迫感を覚えるのは筆者だけではないだろう。
バイデン政権は、インフラ投資の財源として、トランプ政権が2017年末に21%に下げた法人税を28%に引き上げるというから事態は深刻だ。中国の法人税より高くなるため、結果はアメリカから脱出する企業が増え、製造業の空洞化を招くことになりかねない。バイデン大統領は、インフラ投資で大規模に雇用を創出し、「中国に勝利する」というが、アメリカが経済的に衰退し「中国に敗北する」インフラ投資になる可能性が高い。
もし超党派の法案として構想を成立させる気が少しでもあるなら、財源を増税や赤字国債の発行によって賄うのではなく、官民連携(PPP)というスキームを使って、民間の投資を呼び込むべきである。
フロリダ州のマイアミ港のトンネルで活用されたPPPの成功例を以下に紹介する(2019年6月号の記事を再掲。内容や肩書きなどは当時のもの)。
PPP America ルポ
PPP先進国アメリカから学ぶ
「役所仕事」を4倍早くする
アメリカでは官民連携(PPP)の活用で国のインフラを再構築している。
その成功事例を取材した。
(編集部 長華子)
クリストファー・ホジキンス
日本では、車両事故が起きて、復旧に手間取れば、渋滞で数時間を失うのが当たり前。それが当たり前ではないとしたら─。
記者が次に向かったのは、官民連携で運営されるマイアミ港のトンネルだ。建設・運営を請負う民間企業の代表者クリストファー・ホジキンス氏は、官との間で結ばれた契約の特徴をこう語る。
「私たちは、トンネルを通行できる状態にしておくことで、フロリダ交通局から支払いを受けています。使用できなくなると、多額のペナルティが科されます。たとえば『1時間使えなくなったら、3万ドル(約333万円)』という具合です。トンネルで事故があったら、27分以内に復旧するという取り決めをしています。実際は、半分の時間でやっていますけどね」
自然災害対策も万全だ。
「ハリケーン・サンディが来た時も、地下鉄や他のトンネルが洪水になりましたが、このトンネルでは洪水は起きませんでした」
つまり、官民が連携することで、仕事の「早さ」「安さ」「質」の三拍子が揃うのだ。
官側の負担についても、ホジキンス氏のこんな言葉が印象的だった。
「要するに民間が公共部門の面倒を一手に背負うということです。『我々が建設してあげますよ』『リスクも取ります』ということですから、PPP(官民連携)だと役人は最終的なサービスの良し悪しだけを見ていればよいので、楽なのです」
雇用の8割が地元
先のトンネルの例でも、公共性は保たれていた。
民の仕事で懸念されるのが、「地元の雇用につながるかどうか」だ。地域外の労働者を送り込んでこられては、地元住民にメリットがない。しかしPPP(官民連携)では、官と民と「市民」にウィン・ウィン・ウィンの関係が成立することが求められる。ホジキンス氏はこう語る。
「地元の人を雇用するキャンペーンで、6000人以上の雇用を生み出し、そのうち83%の雇用者は、マイアミの出身者です。約4億円を地元の契約者に使っています。それにより大規模なインフラ建設につきものの、反対運動も緩和できます」
世界の流れはPPP
「すべての道はローマに通ず」
1000年の繁栄を誇ったローマの繁栄を支えたのは、こまめにメンテナンスされた道路や上下水道だった。
しかしローマ帝国末期になると、インフラ整備もままならなくなっていく。インフラは、ラテン語で「基盤」を意味する。基盤を失えば国も崩壊していく。
そうはさせじと、トランプ米大統領は、2016年の大統領選期間中からこう述べていた。
「我が国の優れたインフラが老朽化し崩壊するのを、もはや看過することはできない。我々は環境を保護しつつ、光り輝く新しい道路、橋梁、鉄道路線、運河、トンネル、高速道路を建設する」
トランプ政権は、今後10年間で1.5兆ドル(約160兆円)をインフラに投資することを優先課題に掲げている。その中で注目すべきは、大きな柱が「官民連携」だということだ。
連邦政府が予算2000億ドル(約23兆円)を拠出し、残りの1.3兆ドルは、州政府や、PPP(官民連携)などの民間の資金で、総額1.5兆ドルを投資する計画だ。
アメリカと同様、日本も民の力を使って、インフラ再建に動き出すべきだろう。
全線開通しない自動車道、錆びついた橋梁、崩壊寸前の古びたトンネル─。これが我が国の地方を覆っている実態だ。もはや「インフラ後進国」となりつつある。原因は更新が必要な橋や道路が増えているにもかかわらず、予算がピーク時の半分になっていることにある。
日本では、PPP(官民連携)導入の機運がなかなか盛り上がらない。官に「民間に任せよう」という発想が出てこないからだ。
フロリダ州で、PPP(官民連携)活用の成功事例が多いのも、旧来のやり方にこだわらなかったランプレイ氏のような役人がいたことが大きい。
交通インフラはGDPを押し上げる効果があることも分かってきている。地方のインフラが充実すれば、人口流出も止まる。
官が潔く「兜を脱ぐ」ことが、官にとっても市民にとっても、明るい未来へつながるのだ。
【関連書籍】
『ザ・リバティ』2019年6月号
幸福の科学出版
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