「成功したいが、自分をどう変えていいかが分からない人」へ――精神科医がおすすめする 心を浮かせる名作映画(7)
2017.09.11
精神科医
千田 要一
プロフィール
(ちだ・よういち)1972年、岩手県出身。医学博士。精神科医、心療内科医。医療法人千手会・ハッピースマイルクリニック理事長。九州大学大学院修了後、ロンドン大学研究員を経て現職。欧米の研究機関と共同研究を進め、臨床現場で多くの治癒実績を挙げる。アメリカ心身医学会学術賞、日本心身医学会池見賞など学会受賞多数。国内外での学術論文と著書は100編を超える。著書に『幸福感の強い人、弱い人』(幸福の科学出版)、『ポジティブ三世療法』(パレード)など多数。
千田要一著
幸福の科学出版
仕事や人間関係に疲れた時、気分転換になるのが映画です。
その映画を選ぶ際に、動員数、人気ランキング、コメンテーターが評価する「芸術性」など、様々な基準があります。
アメリカでは、精神医学の立場から見て「沈んだ心を浮かせる薬」になる映画を選ぶカルチャーがあります。一方、いくら「名作だ」と評価されていても、精神医学的に「心を沈ませる毒」になる映画も存在します。
(参照)
http://the-liberty.com/article.php?item_id=12795
http://the-liberty.com/article.php?item_id=12810
本連載では、国内外で数多くの治療実績・研究実績を誇る精神科医・千田要一氏に、悩みに応じて、心を浮かせる力を持つ名作映画を処方していただきます。
世の中に、人の心を豊かにする映画が増えることを祈って、お贈りします。
◆ ◆ ◆
今回は、「成功したいが、自分をどう変えていいかが分からない」という人に、オススメの映画を処方いたします。
(1)「幸せのちから」(★★★★★)
まずご紹介したいのが、2006年に公開されたアメリカ映画「幸せのちから」です。 ホームレスにまで身を落としながら、最後には証券マンとして大成功したクリス・ガードナーという実在の人物を映画化しています。
ウィル・スミス演じるクリスは、妻と5歳の息子とともにサンフランシスコで暮らしています。しかし、家賃の支払いさえままならない極貧生活。1日16時間のパート労働で家計を支えていた妻も限界に達し、家を出ていってしまいました。
そんなある日、街中で真っ赤なフェラーリで颯爽と乗り付け、高級スーツに身を包む男を見かけたクリスは、「どうすればあなたみたいになれるんだい?」と声をかけます。
株の仲介人だという彼は、学歴がなくとも証券会社の養成コースを受講すれば正社員採用の道が開けるといいます。
これを聞いたクリスは、多くの応募者の中から養成コースの受講を勝ち取りますが、そこからさらに6カ月間無休という過酷な実地研修が始まります。しかし、クリスは極貧生活を続けながら研修をやり遂げ、ついに20分の1の採用者資格を勝ち取ったのです。
クリスの素晴らしいところは、自分がなりたい理想像に"嫉妬"せず、それをモデルにして素直に真似していったことです。また、逆境にあっても希望を失わず、チャレンジし続けた精神も見習いたいものです。
(2)「イエスマン "YES"は人生のパスワード」(★★★★☆)
次にご紹介するのが、2008年に公開されたアメリカ映画「イエスマン "YES"は人生のパスワード」です。
主人公のカール・アレン(ジム・キャリー)は、ロサンゼルスの銀行に勤めながら、毎日代わり映えしない生活を送っていました。何かと口実をつくっては友人からの誘いを拒み、家のソファで一人テレビを観るという怠惰な日々。彼は究極の"ノー・マン"だったのです。
しかし、親友から「生き方を変えない限り、お前は一人ぼっちになる」と脅され、カールは「すべてのことに"イエス"と言う」ことを決意します。こうして、"イエス・マン"へと変わる修行が始まったのです。
「こんなことで人生が変わるのか」と、最初は猜疑心でいっぱいのカールでしたが、イエスと言い続けた結果、マンネリの日々が心踊るカラフルな人生に変わっていきます。さらに、魅力的な女性・アリソン(ゾーイ・デシャネル)との新たな恋もスタートしていくのです。
キャリア理論には「プランド・ハプスタンス・セオリー(計画的偶然性理論、planned happenstance theory)」というものがあります。スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が人生の節目を分析し、「幸運の女神に好かれる方法論」を体系化したものです(ジョン・クランボルツ著『その幸運は偶然ではないんです!』、諸富祥彦著『偶然をチャンスに変える生き方』など)。
クランボルツ氏の調査の結果、成功者の人生を転換させた出来事の約8割には、何らかの偶然的な要素が大きく関与していることが分かりました。一般には、目標を決めてそれに向かって一歩一歩努力していく「目的志向型」が成功しやすいと考えられていますが、一つの目標に自分を縛りつけてしまわず、柔軟に「偶然」の出会いや出来事をうまく生かしていくほうが成功しやすいと、クランボルツ教授は述べています。
ここで注意したいのは、目的志向そのものが悪いのではなく、「目標至上主義」に陥り、目標までのプロセスを楽しめないことが問題といいます。目標に至るプロセスを楽しむ"遊び心"がなくなれば、寄り道することで生まれる新たな発見がなくなり、失敗を成功の種と見ることもできず、挫折に弱くなってしまいます。
「プランド・ハプスタンス・セオリー(計画的偶然性理論)」という言葉の中にある、「計画性」と「偶然性」は、一見矛盾する言葉です。しかし、クランボルツ氏は、以下の5つの心構えを持つことで「自分にとって好ましい偶然が起きる確率を計画的に高める」ことができるといいます。
- 1.好奇心(関心を広げて、アンテナを絶えず張っておくこと)
- 2.粘り強さ(自分が納得いくまでこだわること)
- 3.柔軟性(特に人生のターニングポイントで重要であり、機を見るに敏であれということ)
- 4.楽観性(常に明るく積極的な態度)
- 5.リスクテイク(リスクを取ることを恐れない心)
「幸せのちから」のクリスは1.好奇心と3.柔軟性、「イエスマン」のカールは4.楽観性の好例でしょう。
(3)「摩天楼はバラ色に」(★★★☆☆)
「チャンスを生かす」という柔軟性について学ぶなら、1986年に公開されたアメリカ映画「摩天楼はバラ色に」もオススメです。ニューヨークでの成功を夢見る若者が大企業のトップに上りつめるサクセス・ストーリーを描いています。
カンザスの田舎から大都会ニューヨークへやって来た若者ブラントリー(マイケル・J・フォックス)。特別なスキルがあるわけではなく、就活もうまくいきません。しかし、「実業界で大成功する!」という夢にかける思いだけは、誰にも負けませんでした。
そこで彼は、縁戚の社長(リチャード・ジョーダン)を頼り、彼が経営する会社でメール・ボーイとして雇ってもらえることに。彼が掴んだチャンスは小さなものでしたが、いち早く情報を伝えるという仕事を生かして、会社の苦境を把握し、再建策を考えます。そして、その再建案を実現する機会を狙うのでした。
日本にも「わらしべ長者」という童話がありますが、最後に成功する人は、その時与えられた小さなチャンスを無駄にせず、次のステップアップへとつなげていきます。成功には、「大きな夢」と「小さな努力の積み重ね」が必要です。
【関連サイト】
ハッピースマイルクリニック公式サイト
千田要一メールマガジン(毎週火曜日、メンタルに役立つ映画情報を配信!)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『幸福感の強い人弱い人 最新ポジティブ心理学の信念の科学』 千田要一著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=780
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