井澤一明
プロフィール
(いざわ・かずあき)1958年、静岡県生まれ。8年間で5000件以上のいじめ相談を受け、いじめ解決の専門家として各地の学校などでの講演やTV出演で活躍中。一般財団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」公式サイト http://mamoro.org
いじめを苦にした子供たちの自殺が、後を絶たない。本欄では不定期に、一般社団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」の井澤代表の寄稿を掲載する。
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3月26日、デンマーク大使館に招かれ、デンマークのフレデリック皇太子殿下とメアリー妃殿下に拝謁し、いじめ問題について説明した。
妃殿下は、社会問題への取り組みや、子どもの健全な育成に関わる活動で知られており、複数の社会団体の支援を行っている。妃殿下は、いじめ問題にも精力的に取り組んでおられ、デンマークとグリーンランドでいじめ防止活動を行う「メアリー財団」の代表も務めておられる。
来日にあたり、妃殿下から「日本のいじめ問題の専門家や日本の子供たちと、いじめについて話したい」とのご要望があったため、対話が実現した。
対話は、著名な教育評論家である尾木直樹・法政大学教授、いじめを経験した小中高生7名、井澤の計9人と40分程度行われた。
尾木氏は、日本のいじめについての概略を、以下のようにご説明した。
- 日本でいじめが問題視され始めたのは、1985、86年あたりから。
- 2013年、いじめ防止対策推進法が施行された。
- 学校にいじめ防止委員会を設置することや、教員がいじめ防止のための研修を受講することなどが定められた。
- 文部科学省によると、現在、97%の学校がいじめ対策に取り組んでいる。
- 問題点は、いじめ防止委員会への外部委員の登用が進んでいないことだ。
井澤からは、いじめ相談について、以下のようにご説明した。
- この8年間で、5000件以上の相談を受け、8割以上を解決してきた。
- 子供たちだけでいじめを解決することは困難であり、教師や保護者などの力が必要だ。
- いじめ相談の大半は、母親からの相談であり、子供たちからはEメールでの相談がほとんど。
- 子供たちと何回、何十回とやりとりをして、学校や連絡先を聞き出して解決していく。
- しっかりとした先生、学校であれば、1日で解決する事例も多い。
また、小中高校生も、それぞれ自身のいじめに関する体験を語った。
妃殿下からは、「日本に『いじめ防止対策推進法』のよう法律ができたことは素晴らしい。私もデンマークで、加害者、被害者だけでなく、その周りの子供たちに、いじめに立ち向かって欲しいという運動をしている。いじめ相談5000件には驚いた」とのコメントをいただいた。
終了後には、メディア向け写真撮影が行われ、皇太子ご夫妻のお帰りの際には、子供たちの付き添いとして来られていた保護者にも、ご夫妻から握手を求められ、握手する場面もあった。
この対話は、デンマーク大使館のホームページに、「デンマーク王国皇太子殿下と妃殿下、いじめについて専門家や日本の子どもたちと対話」として紹介されている。
日本の教育界には、善悪を教えることは「押しつけ」だという風潮がある。しかし、「いじめ加害者の子供にも悩みがある」などといっていじめを放置していると、被害者の子供が自ら命を絶ってしまう。学校や教師の側が、明確な善悪の基準を子供たちに教える必要があるのだ。
「いじめは悪」というのは、世界共通の価値観であることを実感した。そのことを、各国の問題意識を持つ方々と確かめ合いながら、いじめをなくす努力をしていきたい。
【関連書籍】
幸福の科学出版 『教育の法』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=49
幸福の科学出版 『いじめ地獄から子供を救え!』 リバティ編集部
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=488
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2015年2月13日付本欄 道徳の教科化、まだ踏み込みが足りない(前編)
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2015年2月14日付本欄 道徳の教科化、まだ踏み込みが足りない(後編)
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9198
2014年5月号記事 【最終回】いじめは必ず解決できる