10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の記念撮影。欠席したオバマ大統領の代役のケリー国務長官は右端にひっそりと収まり、中央には習近平・中国国家主席が陣取った。写真:ロイター/アフロ

2013年12月号記事

2020年「盟主」日本がアジアを守る

──中国封じ込めの国防戦略

アメリカが「世界の警察官ではない」と宣言する中で、日本は自分の国を自分で守る体制を早急に固めなければ、中国の属国となってしまう。2020年までを見通したときに、日本に必要な防衛戦略とは何か。

防衛大綱ってなあに?

日本の安全を守るために必要な防衛力を整備するためには、どのような危険や脅威が周りにあるかをしっかり見極め、飛行機や船、武器などを調達したり、自衛隊の動かし方を決めなければなりません。こうした装備の調達などには年単位の時間がかかるため、防衛を考えるためには、ある程度長いスパンで物事を捉える必要があります。

そこで、向こうおよそ10年を見通して、防衛の方針を打ち出すものが「防衛計画の大綱」(防衛大綱)です。最新のものは民主党政権下の2010年につくられましたが、中国の脅威を背景に国防体制の強化を図る必要があることから、安倍自民党政権は年末までに大きく見直す方針です。これまでに、自衛隊に海兵隊のような部隊を創設することや、敵地を攻撃できる装備を持つという内容を盛り込む案が議論されています。

国際オリンピック協会のロゲ会長が「TOKYO」とコールした瞬間、日本中が歓喜に沸いた。戦後の荒廃からの奇跡の復活を世界に示した1964年大会から56年。2020年に再びめぐってくる東京五輪は、先進社会となった日本を、世界に示す機会になる。

しかし、 7年後のオリンピックを無事に迎えるために、日本は乗り越えるべき大きな難問に直面している。それは、日本が独立国としての立場を維持できるのか、あるいはその頃には中国の属国になっているのか、という問題である。

「世界の警察官」を降りたアメリカ

世界一を誇ったアメリカの威光にも陰りが見え、戦後の日本の安全を守ってきた日米同盟は、岐路に差し掛かっている。オバマ政権は第1期で、「アジア回帰」を打ち出し、中国の覇権主義に対抗する姿勢を見せたが、今や有名無実となっている。

与野党の対立で10月1日から米政府は一時的に閉鎖され、オバマ大統領は東南アジア歴訪をキャンセル。対する中国は、習近平・国家主席と李克強首相が各国を丁寧に回り、この地域に覇を唱えつつあることを印象づけた。

アメリカはベビーブーム世代の大量退職による社会保障費の増加で、今後も慢性的な財政難に悩まされる可能性が高い。国防費は向こう10年で、すでに1兆ドル規模の削減が予定されている。当然、東アジアの守りも影響を受けざるを得ない。

国際政治アナリストの伊藤貫氏は、本誌の取材に対し、次のように述べた。

「アメリカはすでに、世界の二つの地域で同時に戦争をする能力を持つ戦略を放棄しました。アメリカと中東諸国の紛争は続きますから、中国や北朝鮮は、好き勝手なことができる。アメリカが日本を守ってくれるのも、どんなに長続きしても、せいぜいあと15年でしょう」

オバマ大統領は「アメリカは世界の警察官ではない」とすでに宣言した。 5年前の大川隆法・幸福の科学総裁による守護霊インタビューで、オバマ大統領守護霊は「将来、アメリカは『世界の警察』ではなくなるのです」と述べていた(注)。昨今の事態は、いわば悪夢のようなデジャヴだ。

中国が西太平洋から米軍を追い出すべく軍拡にいそしむ中で、日本が自分の国を自分で守る体制を早急に固めなければ、中国の属国となる日は近い

ここ20年以上の間、毎年10%以上も軍事費を積み増してきた中国は、東シナ海で日本に対する領海・領空侵犯などの威嚇行為を繰り返している。尖閣諸島周辺に眠る石油が目当てという声もあるが、決して油断するわけにはいかない。背後にある中国の戦略的な動きを読み解き、対策を練る必要がある。

伊藤氏はこう語る。

「戦後のアメリカ依存からの『パラダイム・チェンジ』が必要です。今ならまだ打つ手があっても、10年後では手遅れになります」

そうした中で、12月に行われる防衛大綱の見直しは、日本が力強く国防強化へと舵を切るチャンスと言える。中国の海洋戦略を検証しながら、2020年を見据えて、日本の独立を守るために必要な防衛戦略を考える。

(注)『バラク・オバマのスピリチュアル・メッセージ 再選大統領は世界に平和をもたらすか』(大川隆法著)