共産党を美化する「愛国教育」に反対する香港市民。

2012年11月号記事

香港の小中学校で必修化の準備が進められていた「国民教育科」が、市民のデモを受けて中止に追い込まれた。中国共産党を美化するカリキュラムの内容に、「洗脳教育だ」という批判が高まったからだ。

この教科の指導方法をまとめた資料には、共産党が「進歩的で、私心を捨てて団結した集団」と記載されているほか、「政党の争いが政治に害をもたらす」と民主主義に否定的な内容も盛り込まれている。

この教科の導入を後押ししていたのは、香港市民に中国本土への「愛国心」を芽生えさせようと苦心していた北京政府にほかならない。香港は2047年まで、中国本土と異なる自由主義制度を維持することができる。しかしその 期限が来る前から、今回のような北京政府による「香港中国化」の工作が進んでいた のだ。

だが自由を愛する香港市民は、共産党のプロパガンダに満ちた「愛国教育」に対し、猛然と反対の声を上げた。主催者発表で数万人規模のデモが7月から起き、9月には最大で12万人の市民が政府庁舎前で連日の座り込みを行った。

その結果、香港政府は9月8日、2016年に定めていた導入期限の撤回と、カリキュラムの実施を各学校に任せることを決定した。