みなさん、こんにちは。いい映画、ご覧になっていますか。

「いい映画」の定義はいろいろあるでしょうが、その一つは「人間学の勉強になる」ということだと思います。大川隆法・幸福の科学総裁は著書『人として本物となるには』第3章で、こう述べています。

結局、世の中で最後に生き残るというか、大きく成長する人は、『人間学に通じているかどうか』なのです。『人間通であるということ』──どんな分野に進むにしても、みなさまがたの成長を約束するものは、結局はこれなのです

いい映画は物語を楽しみながら、あるいは美男美女の姿に魅せられながら、さまざまに人間学を学べる優れた教材です。現在「午前十時の映画祭」で上映中の『砂の器』(1974年)は、ミステリーを通して人間の悪や悲しさの一面を深く見せてくれる、日本映画史に名高い一本です。

さて、まずお断りしておく必要があるのは、この映画の原作が松本清張(1909~1992)の推理小説であることです。リバティ読者の皆様はご存じと思いますが、松本氏は大川総裁が2012年、同氏の没後20年目に行った霊言収録では残念ながら地獄界の住人となっていました。そんな人物の原作による映画をあえて取り上げる理由は二つあります。

一つは、大川総裁が松本清張全集を所持して読んでおり、その作品群に一定の評価を与えていることです。総裁は同氏の霊言(『地獄の条件──松本清張・霊界の深層海流』)を収録する前段で、次のように述べています。

彼は、『社会派作家』と言われるだけあって、社会の裏側を見る視点からは、ある意味で、ジャーナリスト的な面を感じます。(中略)したがって、『清張文学』は、ある意味で人間学の宝庫であると思います

さらに総裁は、清張文学の映像化についてこう述べています。

現在でも、テレビのドラマで、ときどき、松本清張原作の作品を放映することがありますし、『松本清張の小説をテレビドラマにした場合には、まず失敗がない』と言われています。また、彼の小説は、かなりの数が映画化されています。その意味で、作家としての力量は、そうとうあったのではないかと感じています

総裁は他の機会にも清張原作のテレビドラマに何度か言及していますので、原作者が地獄に堕ちたからといって、その映像化作品まで一概に忌避する必要はないでしょう。400本を超える清張文学の映像化作品中、最高傑作とされるのがこの『砂の器』です。直木賞作家で映画評論家の長部日出雄は本作を「文学と映画が、両者の特質を生かしつつ、鮮やかに結びついた最上の好例といえよう」と評しています。

(あらすじ)

東京・蒲田の国電操車場内で男性の他殺死体が発見された。ベテラン刑事の今西(丹波哲郎)と若手刑事の吉村(森田健作)は、被害者が直前に犯人らしき男と話していた「カメダ」という言葉と訛(なま)りを手がかりに捜査に乗り出す。やがて解き明かされる犯人の動機には、幼い頃の被差別体験が重くからんでいた。

映画は原作の内容を絞り込み、殺人のトリックよりも犯人の来歴と動機、刑事たちの捜査によって明らかになる人間ドラマに重点を置いています。捜査の描写における昭和40年代の風俗や鉄道の旅、各地の田舎の風景もオールドファンには懐かしいでしょう。

しかし、何といっても本作の見どころは後半のシークエンスで、脚本はここで三つの異なる時空間を交錯させています。まず、原作では数行しか書かれていない犯人の幼時の体験を詳しく映像化し、そこにコンサートで演奏されるピアノ協奏曲の悲愴美を重ね、観る者の情動を怒涛の如く揺さぶります。私は今日劇場で三回目を観て、不幸な親子の回想シーンに今回も涙しました。もう一つ重なるのが、コンサートと同時に開かれている警視庁の捜査会議です。会議で今西が事件の謎解きを語る際の人間味あふれる弁論は忘れ難く、本作は丹波哲郎のキャリア最高の演技と目されています。同氏は生前、大川総裁と接触があり、森田健作氏も「ザ・リバティ」誌に登場したことがありました。幸福の科学と縁ある二人のスターの半世紀前の若々しい姿を目にすることができるのも、昭和の魅力たっぷりです。

脚本・音楽・演技が相俟って日本映画の新境地を開拓したとされる本作。戦前から戦後にかけての日本社会の人情と情念がタイムカプセルのように込められた人間ドラマとして、第一級の映画芸術として、鑑賞をお勧めします。

悪は露見し、他者を犠牲にして栄光の頂点に上り詰めんとした者は、転落して裁きを受ける。そんな勧善懲悪の人間学を学べるストーリーでありながら、原作者が暗い世界に堕ちていた理由については、同霊言をご一読ください。あれから13年。大川総裁との対話がきっかけとなって、その後の松本清張霊が霊界の"深層海流"から抜け出し、陽の光が射しこむ海面近くに向けて少しでも浮上しつつあることを願わずにはいられません。

(田中 司)

 

『砂の器』

【公開日】
2025年6月27日~7月24日(劇場により異なります)
【スタッフ】
監督:野村芳太郎 脚本:橋本忍 山田洋次 音楽監督:芥川也寸志
【キャスト】
出演:丹波哲郎 加藤剛 森田健作ほか
【その他】
1974年製作 | 143分 | 松竹

DVD、各種映像配信でも視聴できます。

【関連書籍】

人として本物となるには

『人として本物となるには』

大川隆法著 HSU出版会刊

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地獄の条件―松本清張・霊界の深層海流

『地獄の条件─松本清張・霊界の深層海流』

大川隆法著 幸福の科学出版

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