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2025年8月号記事

トランプ関税の正しい見方

マスコミや専門家は連日、関税のさまざまなマイナス面を取り上げ、「関税を課すアメリカは信用できない」というイメージさえ広げてきた。
本当にそうなのだろか。


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トランプ関税の正しい見方 - Part 2 トランプ氏を逆なでする親中の石破政権


トランプ氏を逆なでする親中の石破政権

一体"あれ"はなんだったのか……。そう思えてならないほど、日米交渉に暗雲が立ち込めている。

あれというのは、メディアなどがこぞって太鼓判を押した2月の日米首脳会談のことだ。「評価したい」(産経新聞社説)、「日本側の主張概ね通る」(読売新聞社説)、「120点」(早稲田大学の中林教授)と論評し、「関税交渉もうまくいく」と国民に期待させた(*1)。だが蓋を開けてみると、合意する見通しが立っていない。

(*1)日米首脳会談後の会見で石破首相は記者から、「関税を課されたら報復するのか」と問われ、「仮定の質問には答えない」と返答。この発言に日本メディアは「大ウケ」と報じたが、トランプ氏は"国会答弁"で逃げた首相とは握手もせずに足早に退出し、怒りに満ちていたというのが米サイドの見方である。


石破首相は関税の意味が全く理解できず

「(トランプ氏とは)ひょっとしたらケミストリー(相性)が合うかもしれない」と語っていた石破首相。しかしその後、関税を掲げるトランプ氏に関し、「何を言っているかよく分からない」「もう論理として非常に通りにくい」とお手上げ状態。相互関税が課された後には「誰に話せばトランプ氏に伝わるのか分からない」「言うなれば国難。政府与党のみならず、野党の皆様方も含めて超党派で検討、対応する必要がある」と述べ、首相の専権事項である外交で野党に助けを求める恥を晒した。

案の定、4月7日に行ったトランプ氏との電話会談は、通訳を入れて「実質10分程度」であっさり終了。会談後トランプ氏は、「日本は貿易でアメリカをひどく粗末に扱ってきた」「日本はすべてを変えなければならない。特に中国に対して」と、交渉が不調だったことを露骨に示した(下図)。

米政府は当初、「対中包囲網で共闘できる日本と真っ先に話をつけ、それをモデルにして他国と交渉しようとした」とみられている。そのため日本は交渉の一番手に選ばれ、「合意に非常に近い」(トランプ氏)と言われていただけに、交渉が進まない現実とのギャップが起きた原因をしっかり理解する必要がある。


石破政権は対中包囲網に抵抗

結論から言えば、トランプ政権は「石破政権の親中路線」を強く懸念し、日本との合意を後回しにせざるを得なかった可能性が極めて高い

というのも、米政権が「一部の国」に内々に伝達した関税の真の狙いについて、「石破首相の親中姿勢を警戒し、日本には共有しなかった」との指摘が複数あるからだ。これは、米メディアのブルームバーグが「日本は対中包囲網に参加するよう求めるアメリカに抵抗する意向を示す」と日本政府関係者の話として報じていることからも裏付けられる(*2)。

(*2)4月24日に「日本は抵抗の構え、米政権の対中貿易包囲網に」と題して報道。


トランプ政権は中国詣でに強い不信感

特に、「トランプ政権関係者を困惑させた」とみられるのが、日米で対中包囲網に入るか否かの重大な方針を交渉する最中に、与党・公明党の代表や日中友好議員連盟訪中団(会長は自民党の森山幹事長)が訪中し、パンダの貸与などを要望したことだ。与党の中枢メンバーが相次いで中国詣でし、「日本は中国の側に立つのか」と決定的な不信感をアメリカ側に抱かせたことを本誌も確認している。

先に述べたように中国は、トランプ関税に抵抗するよう各国に働きかけ、石破首相にも「関税で中国と協調する」ことを求める親書を送った。これに応える形で、与党メンバーが訪中したのである。

日本は石破首相の親中路線によって、本来勝ち取れたはずの譲歩も勝ち取れない恐れが出てきたことを覚悟しなければならない。


トランプ関税の正しい見方2-1

《画像をテキスト化》

日米交渉の流れ

2月3日 石破首相「(トランプ氏とは)ケミストリーが合うかもしれない」

2月7日 日米首脳会談。マスコミが会談を「予想以上の成果」と報道

2月9日 石破首相「(トランプ氏とは)相性は合うと思う」

3月28日 石破首相「(トランプ氏は)何を言っているかよく分からない」

4月2日 米政権が相互関税を発表。石破首相「(関税は)残念で不本意」

4月4日 石破首相「誰に話せばトランプ氏に伝わるのか分からない」「言うなれば国難」

4月22日 「中国政府が米関税で日本に親書を送っていた」との報道

4月22日~24日 公明党代表が訪中

4月25日 トランプ氏「(日本との)合意に非常に近い」

4月27日~29日 日中友好議員連盟訪中団が中国を訪問

 

次ページからのポイント(有料記事)

対米交渉はどう乗り切ればよいか

トランプ関税で中国は阿鼻叫喚

Column 中国は関税とは「別次元の報復」をしている