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新しいローマ教皇を決める選挙が行われていた中、中国の司教協議会は、国内の2つの地区で新司教らを選出しました。
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カトリック教会の総本山バチカン(ローマ教皇庁)はこのほど、フランシスコ教皇の死去に伴い、新教皇を決める選挙「コンクラーベ」を行いました。その結果、アメリカ出身のロバート・フランシス・プレボスト枢機卿を選出。プレボスト枢機卿は今後、教皇名として「レオ14世」を名乗ることになります。
一方、コンクラーベが行われていた裏で、中国国内では、上海教区と河南省新郷教区で新司教を決める選挙が実施されました。中国政府によって承認された両教区の代表者らは、同じく政府が認めた候補者の中から、新司教を選びました。
上海教区では呉建林(ご・けんりん)神父が補佐司教として、新郷教区では李建林(り・けんりん)神父が司教として選出されています。ただ、両氏は共に中国共産党の支持者として知られている人物。呉氏は2018年、政治諮問機関である中国人民政治協商会議の全国委員会の一人に選ばれ、李氏は過去に「河南省での、未成年者のミサ(宗教儀式)への参加禁止」を支持しました。中国政府の管理下にある司教協議会は今後、両氏の名前をバチカンに提出し、承認か拒否の判断を求めることになります。
この「中国側が司教の候補を選び、ローマ教皇が判断する」という仕組みは、中国とバチカンが18年に結んだ合意によるものとされています(合意内容は非公開)。両国は1951年に断交後、司教任命権をめぐって長年対立してきましたが、フランシスコ前教皇が関係改善に強い意欲を示し、2018年に上記の暫定合意を締結。その後も合意の延長を繰り返し、中国外務省は24年、さらに4年間延長すると公表しています。
しかし、中国当局が国内での宗教弾圧を繰り返している点は看過できません。米国際宗教自由委員会(USCIRF)は今年、「当局は幾度となく、国が管理するカトリック組織への加入を拒否した地下教会の聖職者を拘束したり、強制連行して消息不明にしたり、居場所の公表を拒否したりしている」との報告書を発表しました。
新たに司教が選出された新郷教区でも、当局は、共産党の要求に従うことを拒否し、地下教会の司祭志望者のための神学校を設立した張維柱(ちょう・いちゅう)司教を逮捕し、神学校も閉鎖しました。張司教は今も非公開の場で不当に拘束され続けているといいます(5月8日付米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版)。
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