2023年4月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第121回
幸福実現党 党首
釈 量子
(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/
増大する介護保険料を抑えるために必要な「宗教的精神」
国会で2023年度の予算審議が行われています。
各省庁が要求した予算の総額は、過去最大の114兆円。このうち防衛費の増額に焦点が当たっていますが、一般会計の最大の支出は32%を占める「社会保障関係費(年金、医療、介護等)」です。
事実上の税金と言える社会保険料を含めると、社会保障給付費だけで年間126兆円ものお金が使われています。
ウクライナの復興に100兆円必要という話もありますが、まさに一つの国を立て直せるだけのお金が、毎年毎年、社会保障に使われているのは異常であり、真正面から向き合う必要があります。
「要介護認定」だけで年間数千億円が消える
社会保障関係費の中で、今後増えると見込まれるのが介護保険料です。介護保険制度がスタートした2000年度、総費用は3.6兆円でしたが、現在では13兆円を超えました。
このようなものが続くはずはなく、介護保険制度がなかった時代に立ち戻って、ゼロベースで考えるべき時ではないでしょうか。
例えば、必要な介護の程度を8段階に分ける「要介護認定」という制度があります。認定の度合いに応じて介護保険の給付額が決まりますが、国内外の介護の実状に詳しい専門家は「日本以外にこのような仕組みはなく、本当に必要なのかを見直すべき」と訴えます。
実際、認定には多くの時間とコストがかかります。まず、介護を必要とする高齢者の自宅に市の担当者が訪問し、聞き取り調査をします。たいていは民間に業務委託されており、「1件あたり8千円」ほどかかるそうです。これに主治医の「意見書」を加え、コンピュータによる一次判定が行われます。その後、学識経験者による「介護認定審査会」で二次判定を行いますが、審査会の参加者にも日当が数万円出されます。
前出の専門家は「この制度をやめるだけで、年間数千億円は節約できるはずです。医療には『要医療度』などなく、医師が必要な医療を提供するだけです。介護でも、ケアマネージャーなど介護のプロが、介護が必要な方の様子を見て、自立のために必要なサービスを提供すればよいのです」と話します。
生活保護が家族の絆を断ち切る?
さらに、避けては通れない問題が、生活保護(生保)受給者の実態です。
関西地方でケアマネを務める男性は「生活保護を受けると、介護も医療も無料になります。そのため、年金を返納して生活保護を受給する人もいるんです。また、大きな一軒家に住みながら、親子関係の悪化を理由に『世帯分離』して、生活保護受給要件を満たすケースもあります」と語ります。
弱者救済を標榜するある党の地方議員が「善意」からこうした"知恵"を授けていることも大きな問題です。生活保護は最後のセーフティネットであり、本当に必要な人に支給されるべきですが、安易に自助の精神や自立心を失わせる方向に国民を誘導するのは由々しき事態でしょう。
日本再生に必要な「宗教的精神」
本来、介護保険制度の理念は「自立を支援する」ことにありますが(介護保険法第1条)、実際には骨抜きになっています。
要介護度が高いほどたくさんの保険料が出る仕組みなので、自立を促すと介護事業者が立ち行かなくなるからです。
このように、介護保険制度や生活保護など「公助」を厚くすればするほど、「自立」からは遠ざかります。生涯現役人生を目指して、心身を鍛える「自助」と共に、家族や地域、宗教コミュニティなどで助け合える「共助」の面を厚くする考え方が求められます。
最大の問題は、「自立」に伴う「魂」の喜びや尊さが見失われていることです。
二宮尊徳翁には、次のような教えがあります。「人の手はわが方へ向いて、わがために便利にできているが、また向こうの方へも向き、向こうへ押すようにもできている。これが人道の原理だ。採ることばかりを勤めて、他人のために押すことを忘れるのは、言ってみれば禽獣だ」。すなわち「譲る」「愛を与えよ」と説かれたのです。
社会保障関係費が増大しているのは、「どれだけもらえるか」と考える人が増えているからです。人間の誇りは、自助の精神を基本とし、他人に与えることにあります。
奪うより与えることで幸福になれるという「宗教的精神」が、介護はもちろん、日本再生のために必要ではないでしょうか。