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米紙ニューヨーク・タイムズはこのほど、10万枚に上る中国政府の公文書を調査し、大量の監視カメラ設置やDNAデータベースの構築などの中国の監視システムに関するレポートを公開しました。

《詳細》

中国では、政府機関が民間企業と契約した際には、製品要件や目的、予算規模などを説明した入札記録の保持・公開が義務づけられています。米非営利団体である「Asia Society」が、インターネット上に散在している公文書を収集。ニューヨーク・タイムズの調査チームは一年以上かけて調査・分析し、中国の監視システムに関するレポートをまとめました。

それによると、全世界に約10億台あると言われている監視カメラのうち、半数以上が中国に存在しています。中国の警察は、食事や旅行、買い物などの娯楽施設にカメラを設置する意向を各所で示し、住居やカラオケ、ホテルなどのプライベートな建物にも顔認識カメラを設置するよう動いていたことが分かっています。

その一例が、福州市にあるシェラトン・ホテルにカメラが設置され、ホテル側が撮影したデータを地元当局に提供していたというものです。

監視カメラによって捉えられた膨大な画像や動画は、政府のサーバーに一括管理され、人種や性別などを判別できる分析ソフトウェアに供給されることになります。福建省の入札文書では、約25億枚もの顔画像が警察に保存されているとの推計が掲載されており、非常に大規模なデータがあることが伺えます。

その他にも警察は、顔認証カメラにレコーダーの設置を進め、顔と声で個人を特定するデータベースの構築を目指しています。

さらに、DNAデータベース構築の取り組みも行っています。新疆ウイグル自治区では最大300万人もの虹彩サンプルを保持できるデータベースが構築され、中国各地にも同様のデータベースの構築が進められています。

2014年には河南省で、当局が男性のDNAデータを収集し、男性に受け継がれるY染色体を追跡することで、父方の家族に沿って数世代も遡ることが可能になっています。こうした動きは少なくとも25の省と地域で見られています。

レポートでは、中国政府は複数のデータを組み合わせて包括的な市民のプロファイルの構築を目指していると結論付けられています。

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