オーストラリア政府は6日、国連が求める「2030年までに石炭火力発電を全廃する」という目標に対して、2030年を超えても石炭の産出と輸出を継続すると表明しました。

国連の気候変動問題担当特別顧問セルウィン・ハート氏は5日、オーストラリアのキャンベラで、石炭火力を2030年までに廃止しなければ、気候変動はオーストラリア経済全体に大打撃を与えると訴えました。

これに対して、オーストラリア政府が抗議の声明を出し、多くの国会議員からも批判の声が上がっています。

16日で豪州の1年分の排出量を出す中国を批判しない国連

石炭の関連産業がオーストラリアの基幹産業になっていることを踏まえて、キース・ピット資源・水資源相は「この極めて重要な産業(石炭産業)の未来を決めるのはオーストラリア政府であって外国の組織ではない。後者の望むように産業を止めれば、多くの雇用と数十億ドル規模の輸出が我が国の経済から失われることになる」と主張しました。

さらに、労働党のジェエル・フィッツキボン議員も、「(国連のハート氏の発言は)オーストラリアの経済や市場を十分に理解していない」と批判しました。

また国連の石炭火力全廃計画には、16日間でオーストラリアの1年分の二酸化炭素を排出している中国が入っていません。このことに対しても、国民党のオースト・ガナバン議員は、「偽善的だ」と述べ、国連が オーストラリアの経済を破壊しようしていると指摘しました。

不測の事態に対応できる石炭火力は必要不可欠

本誌・本欄が繰り返し主張してきた通り、人為的なCO2排出による地球温暖化や、それによる異常気象というのは科学的に観測されていません。それにもかかわらず、二酸化炭素排出を大幅に削減する「脱炭素」は、実現不可能なもののみならず、いたずらに国の生活を壊すものです。

国連が撤廃を求める石炭火力発電は、低コストで安定的に電力を発電できる優れもの。そのためアジア諸国や途上国を中心に必須の設備です。先進国においても、石油の輸入が止まるなど不測の事態にも対応できる石炭火力は、エネルギー安全保障の観点からも重要です(関連記事参照)。そうしたことから考えても、オーストラリアの主張はもっともです。

さらに、先進国の脱炭素の動きに乗じて、中国は、経済・エネルギーで"一人勝ち"する構図をつくり出そうとしています。各国で石炭火力の閉鎖が進む中、中国が石炭などの資源を買い占める準備も着々と整えています。その一環として、ロシアは石炭生産を加速させ、中国への輸出量を増加。モンゴルも中国への新しい石炭輸送ルートを拓いています。

中国国内では石炭火力発電所の建設が続けられており、エネルギー・クリーンエアー研究センターの発表によると、中国は2020年、平均週1基のペースで大型石炭発電所を建設していることが判明しています。このままでは「LNGの最大のお客さんは中国で、かつ、石炭を買ってくれるのは中国だけ」という状況になりかねません。つまり、中国に石炭を買ってもらえるかどうかが、資源国にとって死活問題になりつつあるのです。

各国が石炭を手放し、エネルギー供給が不安定になって産業活動が破壊される中、中国が世界の石炭を独占し、一人勝ちする未来が見えます。日本政府も含めて、世界各国は「脱炭素」の方針を見直すべきです。

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