2021年8月号記事

コロナ下の総理の条件

戦後日本が経験したことのない危機の時代に突入している。
誰が総理になるにせよ、この中心軸を貫けないリーダーは、
日本の未来を守ることができないだろう。


contents


総理の条件(3)

正義を貫く

台湾を防衛し経済は"脱中国"

条件の3つ目は、「中国問題」だ。
日本国民の生命・安全・財産を護ることもままならない状況から、一刻も早く脱却せねばならない。

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Interview

尖閣に中国ミサイルが置かれる!?

平時法制の穴を一刻も早く埋めよ

明日にでも起こり得る、台湾有事。そのシナリオを具体的に想定することで、
日本が抱える安全保障上の穴が浮かび上がる。

元航空自衛隊空将
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織田 邦男

Profile
(おりた・くにお) 1974年、防衛大学校卒。第6航空団司令官、航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)などを歴任。現在、東洋学園大学客員教授を務める。

地理的に見れば、台湾有事は即ち日本の有事以外の何物でもありません。台湾が攻められれば日本も脅かされます。逆に日本の対応によって、台湾が落ちてしまうこともあるのです。

具体的にお話ししましょう。

中国が台湾を掌握した後の行為として、まず想定されるのが、台湾沿岸から200海里(約370キロ)を「排他的戦闘エリア」に指定することです。「この領域は戦闘区域となり、これ以降、我が国(中国)以外の航空機は全て敵機とみなす」と、全世界に告知するでしょう。

これが日本にとって何を意味するかと言うと、台湾有事が起きれば、与那国島や尖閣諸島を含む日本の先島諸島が、ほとんど戦場に入るということです。

加えて、もし台湾が中国政府の手に落ちれば、「第二列島線」(次ページ地図参照)まで中国の支配下に置かれます。それは、日本のエネルギー資源供給路であるシーレーンが獲られることを意味し、生殺与奪権を握られた日本は中国に従属せざるを得なくなります。


尖閣占領に日本は為す術なし

一方、日本の領土が獲られることによって、台湾が敗れてしまうシナリオもあります。

中国が台湾を侵略する際、一番邪魔なのが沖縄の米軍です。

もし私が中国人民解放軍の作戦部長であれば、尖閣諸島のうち、山のない久場島に、地対空ミサイル「S400」を設置するシナリオを考えます。これは、400キロ先の6つの目標を同時撃墜できる史上最強のミサイルシステムです。

アメリカが気付いた時には、すでに沖縄の米軍基地が中国軍の射程圏内に入っています。そうなれば米軍は、青森の三沢か米グアムまで退きますよ。

このシナリオに対し、「日本の領土にミサイルを持ち込むのは、もはや『武力攻撃事態』であり、政府は防衛出動を下令して阻止できる」と言う人もいます。

しかし、ミサイルを運び込んで来るのは、漁民に扮した海上民兵なのです。「武力攻撃事態」と認定するには、「国または国に準ずる者による組織的、計画的な攻撃」という条件を文言上は満たさなければならない。菅首相にその決断ができるとは思えません。安倍首相でもできなかったでしょう。

しかも世論的に、防衛出動は宣戦布告と同じ響きを持ちます。中国政府は必ず、「日本が先に手を出した」と主張し、国際世論を味方につけようとする。それを論破するだけの肚が、日本政府にあるとは思えません。

「武力攻撃事態」と認定しなかった場合、海上保安庁が対応することになるでしょう。しかし、海保の任務は現行法では「海上交通の安全と治安維持」に制限されるため、現実的にできるのは、電光掲示板や無線で「尖閣は我が国の領土である」と警告することくらいです。

たとえ海上民兵がミサイルを運んでいることが分かったとしても、海保にそれを破壊する権限はありません。右往左往しているうちに、S400が設置され、米軍は手出しできなくなります。

このシナリオに、「沖縄の米軍基地まで中国の射程圏内に入る事態を、アメリカが見過ごすわけがない」との声もあります。

しかし、日本が攻撃していない時点でアメリカが先制攻撃するというのは、日米安保第5条(*)から考えて、ないでしょう。

かくして尖閣・台湾が同時に落ちることになります。

(*)同条を読む限り、日本政府が、自国領土で起きた問題に対し判断を下さず、何も行動を起こさない状況で、アメリカが単独で先制攻撃するとは考えにくい。

 

次ページからのポイント(有料記事)

日本が抱える「平時法制の穴」

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