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バイデン政権による初の施政方針演説は日本でも大きく報じられましたが、同日に行われた、黒人の共和党議員による痛切な訴えとその意義については、あまり詳しく取り上げられていません。

本欄「バイデン大統領が施政方針演説で「大きな政府」路線を打ち出す ワクチンが効かなくなれば最悪な状況になる」でも言及しましたが、バイデン氏が議会で演説を行った28日(現地時間)、黒人のティム・スコット上院議員は共和党を代表する形で反対演説を行いました。

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スコット氏のスピーチは主に、バイデン政権が計画する約6兆ドル(約650兆円)に達する巨額の支出に対し、「大きな政府」を目指すものだと批判するものでした。

スコット氏は、バイデン政権が高速道路や橋などインフラのためと掲げる予算であっても、実際には6%以下しかインフラに充てられないことを指摘し、さらには、バイデン政権が推し進める増税によって経済が委縮し、平均的なアメリカ人の所得が減り得ると警鐘を鳴らしています。

これらも非常に重要な論点ですが、加えて見落としてはならない点が、民主党が主張する「人種差別問題」について真正面から反論したことです。スコット氏はスピーチの中盤、こう語り掛けました。

「私の言うことをよく聞いてください。アメリカは人種差別の国ではありません。(中略)我々の痛ましい過去を利用して、現在の議論を不誠実に打ち切ることは間違っています」

もちろんこれは、アメリカ国内で人種差別的な行為が全くないという意味ではありません。スコット氏はスピーチで、「理由もなく車を止めるよう求められ」たり、「店で買い物をしている時に背後をつけられ」たりという自身の経験にも触れています。

スコット氏が意図しているのは、民主党をはじめとする左派が、「人種差別」という切り札を使ってあらゆる保守的な言論を封じ、議論の場すら持たせないことに対する反論です。

一連の発言に対し、リベラル派はスコット氏を激しく糾弾。あるリベラル派のコメディアンは、「共和党が人種差別の党ではないことをアメリカ人に知らせる」ために強制されたのだと揶揄しました。ツイッターでもリベラル派の人々が、スコット氏を「Uncle Tim」(白人に媚びを売る黒人を指す「Uncle Tom」を、スコット氏の名前になぞらえてもじった蔑称)と呼び、それに対して保守派が「ダブルスタンダード」だと批判するなど、攻防が続いています。

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