2021年3月号記事
Divine Economics
サプライサイド経済学の父 ラッファー博士
コロナ禍で流行する
ケインズ経済学はなぜ問題なのか(前編)
Part 08・特別番外編
コロナ禍で景気浮揚策として、ケインズ経済理論に基づく財政出動が先進国で進行中だ。
だがケインズ理論に基づき失業対策を続けていけば、政府の借金は増え続ける。
今回は特別番外編として、ケインズ経済の問題について語ってもらった。
(聞き手 長華子)
アーサー・B.ラッファー
1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。サプライサイド経済学の父。レーガノミクス、トランポノミクスを導いた。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(幸福の科学出版)などがある。
──コロナ禍で、先進国はケインズ政策をとり、政府支出を増やしています。今一度ケインズ経済の問題についてお話をいただければと思います。
ラッファー博士(以下、ラ): 私の立場とケインジアン(ケインズ学派)の人々とでは、世界観に大きな違いがあります。
ケインズ経済は、人々が働くのは、そこに仕事があるからだというところからスタートしますね。そうなると雇用を確保するために総需要をつくることが、政府のやらなければならないことになります。
一方私は、人々が働くのは雇用があるからだとは考えていません。人が働くのは、税引き後の所得を得るためだと信じています。その非常に個人的で私的なインセンティブ(誘因)によって、人の働く動機が高くなったり、なくなったりすると考えます。
またケインジアンは、貯蓄の多寡は所得額次第だとして、高い所得を得る人は、貯蓄をすると信じています。でも私は、人々が貯蓄をするのは、税引き後の投資のリターンを増やすためだと考えます。
ケインジアンは、政府は赤字になり歳入が足りなくなれば、税金を上げればよい。それによって税収が増えるので、自動的に赤字が減らせると信じています。
でも、それは必ずしも常に正しくない。政府が税金を高くすると、人々の働くインセンティブを減らし、貯蓄や投資をするインセンティブが減るので、税収は減ると考えます。
経済とはとどのつまりインセンティブだからです。インセンティブを変えると、人々は行動を変えます。でもケインジアンにとっては、インセンティブは人々を動かすものではないので、税引き後の賃金、税引き後のリターン、高い税率が引き起こす問題にも着目しません。人はいずれにしても一生懸命働くものだと考えているからです。
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