2020年5月号記事

日本復活の切り札

工場よ、中国から戻ってこい!


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起死回生の一撃

台湾に学ぶ国内回帰

国内回帰は、大国アメリカだからできる。日本とは違う──。そう思う人もいるかもしれない。

しかし、日本より小さな国が「脱中国」を果たしつつある。現地を訪れ取材した。

「蔡英文総統のおかげで、中国に移っていた企業が国内に戻り雇用が増えました。経済が上向いているのを実感します」

台湾北部・桃園市にある工業団地を案内してくれたタクシー運転手の呉兆熊さん(45歳)は、立ち並ぶ台湾企業のビルを横目に、笑みを浮かべながらそう語った。

3%台の経済成長で過去最高の税収

2019年10月~12月期の日本の国内総生産(GDP)が前期比1.8%のマイナス成長を記録する一方で、台湾は3%を超える経済成長となった。

好景気をもたらしたのは、19年1月に台湾政府が打ち出した、「国内回帰政策」だ。中国に進出した台湾企業の生産拠点などを国内に戻すよう促した。

アイフォーンの受注生産で知られる鴻海科技集団や、世界最大手の自転車メーカージャイアント・マニュファクチャリングなど、名だたる台湾企業が国内へ回帰。昨年だけで160社が国内回帰し、投資予定額は2兆5000億円に上る。

2021年までの3年間で4兆8000億円もの新規投資と12万人近くの雇用創出が見込まれている。これを日本の人口に換算すると、25兆円の新規投資と約64万人もの雇用が生まれることになる。

台湾政府の税収も増えており、19年度の歳入は前年比2.6%増の過去最高となった。

次ページからのポイント(有料記事)

台湾の「国内回帰政策」の具体的な内容

「新台湾国策シンクタンク」研究長 李 明峻氏インタビュー

「台湾アジア交流基金」理事長 蕭 新煌氏インタビュー