《本記事のポイント》

  • 消費増税に伴って導入予定の軽減税率により、食品の持ち帰りは8%へ
  • 持ち帰りや出前が増え、店内利用が減れば、店の活気がなくなり売り上げに影響が
  • 政府は数字だけでなく、政策の実施でどんな影響が出るかを考えるべき

2019年10月の消費税率引き上げの際に導入される「軽減税率」により、店内での飲食と持ち帰りで税率に差があることを気にする人が、7割近くに上ることが分かった。リクルートが20代から60代の男女9500人に行ったアンケートで明らかになった。

この結果により、同社では消費増税後はテイクアウトや出前の利用が増えると分析している。売り上げに影響が出る飲食店も多いと見られる。

7割近くの消費者が税率の差を気にするということは、持ち帰りや出前を行っていない店舗では、客足が遠のくことは想像に難くない。軽減税率の導入を受けて、店舗が持ち帰りや出前を導入するとしても、税率変更に対応するレジも必要となる。営業中も持ち帰りを受け付けることで、従来のやり方を変えなければならず、手間がかかり、コストもかさむだろう。

店に活気がなくなる二次的な影響も

特に問題なのは、食事をする客が減ることで、店に活気がなくなることだ。

店の雰囲気は「このお店に入ろうかな」というように、消費者心理を大きく左右する。客が大勢入り、活気のある店はつい入ってみたくなる。しかし、持ち帰りが増えれば、店内から活気が消え、客足も遠のいてしまう。

仮に持ち帰りを導入しても、容器や袋などの経費もかさむ。その経費分を「持ち帰り料」として価格に上乗せすることに、二の足を踏む店も多いはずだ。

さらに持ち帰りとなれば、追加注文がとれなくなる。食事中の「もう一品頼もうかな」や、食後のデザートとコーヒーなどの注文が減るのも、積もり積もれば売り上げに大きなマイナスとなるはずだ。

持ち帰りに特化した新しい店などのビジネスチャンスがあると見る向きもあるが、そのようなことができるのは、資本力のあるチェーン店のように一握りの企業だけだろう。個人商店では、増税による仕入れ価格・光熱費の高騰、軽減税率の導入コストなどで打撃を受けるのは目に見えている。

政府は増税すべきではない

軽減税率の導入は、国民の負担感を和らげる目的とされているが、政府は数値的な側面ばかりを強調し、「消費者の行動はどうなるか」というシミュレーションが足りていないのではないか。つまり、導入による二次、三次的な影響により、どれだけの経済的損失が発生するかを読めていないと言える。

「コンビニのイートインスペースでの飲食は、客の自己申告により10%となる」「新幹線のワゴン販売は8%、食堂車は10%」など、ただでさえ軽減税率にはさまざまな矛盾が指摘されており、導入後の混乱も予想されている。政府は「百害あって一利なし」のこの政策を見直す必要がある。

そもそも、消費増税ではなく、減税こそが経済を活性化させることを忘れてはならない。まだ増税は止められる。皆で声を上げるべきだ。

(駒井春香)

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